《8》 スロープって何を思い浮かべますか?
- 樋口彩夏
- 2013年3月11日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年5月18日
◆マンツーマン?な社会科見学
昨年、東京で、地下鉄に乗ったときのことです。
私は以前からお会いしたかった、車いすユーザーの先輩に会うため、新橋駅から銀座駅へ行くところでした。
その間、ひと駅!1~2分で着きます。
いつものように駅員さんにスロープで手伝っていただくのですが、「《6》複雑な駅の構造がすべて頭に入っている駅員さん」に書いたとおり、段取りに少し時間がかかります。
ひと駅だとあっという間に着いてしまうので、電車に乗っている時間より、それを待つ時間のほうが長いのは、やるせないなぁ、と思いながら、駅員さんに声をかけました。
私 「銀座までお願いします。」
駅員さん 「銀座だと、ひと駅なので、別の係りの者が銀座駅までご同行いたします。」
私 「?????」
思いがけない展開におどろく私。
やはり憂慮していたとおり、普段のような段取りをしていたら効率が悪いので、ひと駅くらいのときは、スロープをもった駅員さんが同行しているそうです。
電車に乗って1~2分で着いてしまうので、「次の電車に乗せるよ」という連絡をもらった降りる駅の駅員さんが、スロープをもってホームへ行く時間がないのです。
そういう訳で、駅員さんと一緒に地下鉄に乗り、銀座へ向かいます。
普段は、電車に乗せてもらったらお別れなので不思議な感じがしましたが、まわりの乗客の方はもっと不思議そうにこちらを見ていました。
それもそうですよね。
制服も着ているし、どこからどう見ても、駅員さんが電車に乗っているのは不思議な光景でした。
しかも、スロープを持って。
駅員さんと一緒に電車に乗ることなんて、めったにないので、社会科見学のようで楽しい体験でした。
でも、ひと駅なんて、あっという間です。
銀座駅で降ろしてもらうと、私はエレベーターで地上へ。
同行していただいた駅員さんは、反対方向の地下鉄に乗り、新橋駅へ戻っていきました。
エレベーターの中で私は、新橋へ戻る駅員さんを想像し、
「スロープ片手の駅員さんが一人で地下鉄に乗っているのは、さっき以上に不思議だろうな~。」
行きは私(車いすの乗客)が一緒だったから駅員さんも普通に電車に乗れるだろうけど、帰りは駅員さん一人なので、電車に乗りづらいのではないかなぁ?と心配になってしまいました。
駅員さんが無事に戻れますように、と思いながら、私は目的地へ向かいました。
◆あの板の呼び名は、スロープ? 渡し板?
今月の初め、「がん医療の問題を患者と医療者がともに考える」という趣旨のシンポジウムに参加するため、大阪へ行ってきました。
関東と九州にしか行ったことのなかった私は、初めての大阪にワクワク。
大阪で電車に乗ったとき、いつものように「スロープお願いします。」と駅員さんにお手伝いをお願いしました。
すると、駅員さんから「ワタシイタやね~。」という言葉が。
予想していなかった単語だったので、一瞬、聞きとれず???でしたが、“渡し板”だったようです。
「《6》複雑な駅の構造がすべて頭に入っている駅員さん」で、電車の車体とホームの間に段差やすき間があるので、車いすの場合“スロープ”をつかって乗ると書きました。
あの板に“スロープ”以外の呼び方があるなんて、考えたこともなかったのです。
でも、そう言われてみると、あの板の役割は、車体とホームのすき間に橋を渡すことなので、“渡し板”のほうが合っているのかも!と思い、駅員さんに聞いてみました。
私 「大阪はじめてなんです。いつもスロープと言っているのですが、この辺りでは“渡し板”って 言うことが多いんですか?」
駅員さん 「あ~、“渡し板”言うとるなぁ~。よう知らんけど。」
大阪にいる間に5回電車に乗りましたが、そういえば、どの駅員さんもそう言っていました。
たまたまだったのかもしれないけれど、あの板の呼び方の種類が増えて、ちょっと嬉しくなりました。
私は、なんとなく“スロープ”と呼ぶと思いますが、“渡し板”のほうが日本語っぽくて馴染みがいいのでしょうか?
気が向いたら、“渡し板”も使ってみます。
次回は、「足が動かない人はどうやって自動車を運転するの?」ということで、自動車について書きます。

イラスト:ふくいのりこ
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