《2》 車椅子で福岡から東京へ
- 樋口彩夏
- 2013年2月5日
- 読了時間: 5分
更新日:2024年5月18日
「ふぅ~、やっと着いた~!」
昨年11月のことです。「Over Cancer Together~がんを共にのりこえよう~」というキャンペーンの会議に出席するため、福岡から東京へ行ってきました。
(このキャンペーンは、がんを経験した人やその家族などが自分の体験を語ることによって、日本のがんに関する問題を明らかにしていこう、というのが目的です。そして、自らの体験を語れる人を育てる研修やがんの啓発イベントも行います。)
私は、両足が動かず歩けないので、車椅子で生活しています。
1人で福岡から東京まで行ったと言うと、車椅子なのに大丈夫?と驚かれることも多いのですが、意外と問題なく行けるのです。
もちろん、たくさんの方の手を借りながらですが、まさしく一期一会の出会いが楽しくもあります。
私の住んでいる福岡・久留米から東京・赤坂までの移動は、高速バス → 飛行機 → モノレール → 電車と、乗り物のオンパレード。昔から空港の雰囲気や飛行機が好きなので、日にちが近づくにつれワクワクし、テンションが揚がってきます。笑
まずは、自宅近くの駅から空港までの高速バス。
最近の路線バスは、車椅子のままでも乗りやすいノンステップバスが増えてきていますが、高速バスは細い階段の乗降口がひとつだけなので、この日の移動で一番の難関です。
今回は3度目ですが、初めて乗るときは、ハラハラ、ドキドキ、緊張と不安の連続でした。
どうやって乗るかというと、バスの運転手さんとバスセンターの職員の方が2人で抱えて乗せてくれます。
車椅子デビューしたての頃、小児がんの再発がないかを調べるために、年に3、4回千葉の病院へ行く必要がありました。最初の数年は、そこまでして乗っていいのだろうか?と思っていたこともあり、両親に送ってもらっていたのですが、いつまでもそうしている訳にもいきません。一生、車椅子で過ごすのですから、一人で移動くらい出来ないといけませんよね。
しかし、周りの車椅子の先輩方10人くらいに話を聞いてみると、乗ったことがある人はいませんでした。乗れたら便利になるけれど、階段だし乗れないものという前提で避けている方がほとんどだったのです。
でも、乗れるかどうかはバス会社に聞いてみないと分かりませんよね!?もしかしたら、乗れるかもしれない!
ということで、早速、バス会社に電話で問い合わせてみました。

イラスト:ふくいのりこ
「断られるかなぁ」と内心ハラハラしながら、駅から空港へ行きたい旨と、車椅子で全く歩けない身体の事情を伝えます。
すると、私の心配はどこへやら、とても丁寧に対応をしていただきました。
対応してくださった職員の方も、歩けない人を乗せたことがなかったそうで、すこし戸惑っていらっしゃいましたが、一緒に乗れる方法を考えましょう!と言ってくださいました。
私も職員さんも初めてのことなので、お互いに知恵を出し合い話し合った結果、やっぱり抱えるしかないという所に落ち着きました。
乗せてもらうからには、バス会社にとっても、私たち障害者にとっても、お互いに絶対に事故があってはいけません。
1人でお姫様だっこでは危ないだろうし、階段や通路の幅もそんなに広くないので、2人で上半身と下半身を持とう、ということになりました。
これでOK!となりかけた時に、職員さんと私の頭に不安がよぎります。
「いったい、誰が持つのだろう・・・?」
1人は運転手さんで決まりなのですが、もう1人はどこにいるのでしょうか?
検査入院の手続きの都合で私の乗りたいバスの時間が早かったこともあり、バスセンターには職員さんが1人しかいません。他のお客さまが来たときのために、席を外すことが出来ないのです。
さぁ、困った、どうしたものか・・・。
しばらくの沈黙のあと、職員さんから、こんなご提案がありました。
「明日の会議で話し合って、人員を確保いたします。空港での対応もこちらで調整し、往復分の都合がつきましたら、ご連絡いたします。」
次の日、昨日の職員さんから、無事に手配ができたとご連絡をいただきました。
駅と空港とも、乗るバスの時間に合わせて、手伝ってくださる職員さんを派遣していただけるそうです。
飛行機と電車は乗ったことがあるので、高速バスだけが心配の種でしたが、とても親切に対応してくださったので、あとは当日を待つだけ。
そして、いよいよ、東京へ行く日がやってきました。
初めての高速バスに、ちょっぴり不安をかかえながら、自宅から駅へ向かいます。
バスセンターへご挨拶に行くと、職員さんが笑顔で迎えてくれました。
勤務時間の変更など調整が大変だったことだろうと思いますが、嫌な顔ひとつせず、
「車椅子なのに、1人で移動なんて関心だねぇ。また、いつでも手伝うから、もっと外に出てね~。」
と、嬉しいことをおっしゃって下さいました。
世間話をしていたら、あっという間にバスの到着です。
運転手さんも、「バスの中でイメージトレーニングしてきたから、大丈夫だよ!」、と優しい方でした。
他のお客さまが乗り降りした後、運転手さんと職員さんに抱えられてバスに乗り込みました。
高速バスは路線バスと違って、入り口が細い階段なので、とても大変だったと思います。
お陰さまで無事に座席へ座り、お二人にお礼を伝えると、バスは空港へ向けて走り出しました。
(つづく)
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