《9》 私の車の運転 A、B、C
- 樋口彩夏
- 2013年3月20日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年5月18日
みなさんは、車の運転をされますか?
普通だと、右足でアクセル・ブレーキペダルを踏み、両手でハンドルを操作しますよね。
でも、私は両足が動きません。
ペダルが踏めないと、運転はできないのでしょうか?
そんなことは、ありません。
便利な世の中になったもので、足が使えない私でも、ちょこっと車を改造したら、手だけで運転ができるのです。
車を運転しようと思ったら、なんといっても免許がないと始まりません。
両足の麻痺で車いすに乗っている人というと、事故で脊髄や頸髄を損傷した脊損・頸損の方が多いのですが、そういう方はだいたい成人後に車いすになっていたり、車やバイクの好きな人も多く、すでに免許をもっている方がほとんどです。
この場合、手動装置つきの自動車で少し練習をし、免許証に「手動式に限る」という文字が加わるだけで済みます。
しかし、私が車いすの生活になったのは14歳のときなので、当然、まだ免許をもっていなくて、教習所に通うところから始まりました。
普通、自宅近くの教習所に通うと思うのですが、手だけで運転のできる教習車(手動装置つき教習車)を置いている教習所はなかなかありません。
私の住んでいる福岡県では、県内に2校だけでした。(一昨年、当時)
県によっては、県が手動装置つき教習車を何台か保有して、それが必要な生徒が入ってきた教習所に配車しているところもあるようです。
通える範囲にそういう教習車がない場合は、あらかじめ手動式に改造をした自家用車を教習所に持ち込んでの教習になります。
そうなると、技能教習で指導員が使う、補助ブレーキも付けた車でないといけないので、手動装置つき教習車のあるところでの合宿を考えたほうが良い場合もあります。
また、障害者が運転免許をとるときは、「運転免許試験場」で、“運転に支障のない範囲の障害か、どんな条件をつけるのか”等を判断する、適正検査が行われます。
私の場合、適正検査の結果、
「AT車でアクセル・ブレーキが手動式の普通車に限る」
という条件つきの許可が出ました。
教習所も、自宅から車で30分と比較的近いところに手動装置つきの教習車があったので、すんなり教習に入ることができました。
あとは、足を使わず手で運転をするというだけで、みなさんと変わらないステップを踏んで自動車の免許を取得します。
さて、実際にどうやって運転をするかというと・・・。
なんと、アクセル・ブレーキペダルと連動して動くレバーを1本つけるだけ!
“手動運転装置”や“ハンドコントローラー”と文字にすると仰々しいですが、改造としてはシンプルなんだそうです。
車のメーカーさんや福祉車両をとりあつかっている業者さんで改造をしてもらいます。
手動装置は、運転席と助手席の間にあるシフトレバー(フロア式)の横あたりに設置されます。
左手で手動装置をもってアクセル・ブレーキを、右手でハンドルを操作。
レバーを手前に引いたら アクセル、奥に倒せば ブレーキです。
この改造をしてもペダルは普通に使えるので、足で運転をする人も問題なく運転ができます。
ただ、ブレーキペダルを踏んだとき、手動装置も一緒に動くので、最初はちょっとびっくりするかもしれません。
手動装置はパッと見ると、ただのレバーですが、ウインカーやホーンなども操作できるボタンがついています。
その中でも、“ブレーキロック”は優れもの!
信号待ちなどで、少しのあいだ停車することがあると思います。
足で運転をする人は、ブレーキを踏んでいても両手は空いていますよね?
手で運転をしていると、右手は空いても、左手はレバーを押したままになります。
信号待ちのときはいいとして、高速の料金所などでは両手が空かないと困ってしまいます。
そんなとき、ブレーキロックをカチッとすると、レバーから手を放しても車は停まったまま!
のどが渇いてペットボトルを手にとっても、片手ではキャップが開けられない・・・など、運転中とはいえ、両手がまったく空かないと、意外と困るものです。
そして、ハンドルにもひと工夫。
片手運転は危ない、といわれているとおり、曲がるときなど、片手では操作性が落ちてしまいます。
そこで、ハンドルにドアノブのような取っ手をつけます。
長距離トラックの運転手さんが使っていたりするやつです。
これもまた、“旋回補助装置”とか“ステアリンググリップ”とか、仰々しい名前がついています。
この取っ手をもてば、くるくるとハンドル操作も思いのまま。
私は、曲がるときだけ使っています。
言葉だけで説明するのは難しいのですが、車いすでも車の運転ができる!ということが伝わればいいです。
思っていたより長くなってしまったので、次回につづく・・・。

イラスト:ふくいのりこ
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