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《10》 車の運転、車いすも一緒にゴー

  • 樋口彩夏
  • 2013年3月25日
  • 読了時間: 5分

前回のブログ「《9》 私の車の運転 A、B、C」で、足が使えなくても、手だけで運転ができることがお分かりいただけたと思いますが、まだ、肝心なことを書いていませんでした。

車に乗るときは、車いすも一緒に連れていかないといけません。

だれかと一緒のときはトランクに積んでもらいますが、一人のときはどうやって積むと思いますか?

私の乗っている自走用車いすは、約10キロ。

脊損の方などアクティブな車いすユーザーは、ひょいっと抱えて車に積みます。

私は、重いものをもつと、治療の影響でもろくなった骨盤の骨が折れてしまうので、リフトの力を借りて車いすを積みます。

リフトで積むとなると、リフトの種類によっていろいろな動線がありますが、私の場合、自分で抱えて積む一般的な動線と同じです。

そうはいっても、スキー場のリフトや介護タクシーのように車いすごと乗るリフトなど様々で、どのようなリフトか想像しにくいですよね。

私の使っているリフトは、簡単にいえば、車いすを吊り上げてくれるだけのものです。

車の運転席と右後部座席のあいだにあるピラー(車の柱)を軸に、リフトのモーターがついたアームが回転するようなかたちで、使わないときは、右後部座席の窓の上あたりに収まっています。

まずは、駐車場へ行って、車のそばへ。

運転席のドアをあけ、乗り移りやすいよう、なるべく近くに車いすを横付けし、車いすのブレーキをカチッ。

足が使えないので、腕の力だけで身体をうかせ、車いすから運転席のシートへ乗り移ります。

身体はシートに座っても、足はダランと車の外にたれているので、手でもちあげて車の中にしまいます。

そこに、私がいなくなり、空になった車いす。

このままでは、大きくて車に積めないので、車いすのクッション(座布団)を外し、助手席へポンッ。

ブレーキをはずし、座面のひもを引っ張ると、蛇腹が折りたたまれるように車いすがたたまれ、キュッと半分くらいの横幅になります。

これで車いすの準備はできたので、次は車の準備。

車いすのとおり道をつくるため、助手席のシート位置を前にやって、背もたれも前にたおします。

逆に、運転席のシートは後ろにさげ、背もたれも後ろにたおし寝転がります。

すると、右後部座席の窓上に固定されたリフトが目の前に。

リフトを頭の上をとおしながら、シートはそのままに身体だけ起き上がります。

前出のピラーに取り付けたリフトのスイッチを上にたおすと、リフトからスルスルと金具のついた紐が。

それを車いすにつなぎ、スイッチを反対にたおすと、ウィーーンという音とともに車いすが持ち上がっていきます。

一連の流れは、

こんな感じで、車いすを積むのです。

私はリフトを使うので、ちょっと時間がかかってしまいますが、脊損の方は、まさに「ひょいッ」とあっという間に積んでしまいます。

車いすのブレーキをかけずにタイヤが動くようにしておいて、身体の上を転がすようにするのがコツだそうです。

このとき、洋服が汚れないように、バスタオルを敷いています。

雨の日は車いすのタイヤがドロドロになるので、ビニールなども試しましたが、汚れたら洗濯すればいいし、バスタオルに落ち着きました。

リフトで積んでいると一定のスペースが必要なので、標準体型ですが、けっこうギリギリでお腹の上を通しています。

そのギリギリ加減で、体重とお腹まわりの変化がわかってしまうから、恐ろしい。笑

一昨年の夏に免許をとってから、2年が経ちました。

今は運転にも慣れてきましたが、教習中や免許をとって間もないころを思い出すと、思わず笑ってしまう出来事があります。

教習所に通っていたのは、4月から8月の気候のいい時期だったので、天気のいい日は窓を開けて走っていました。

路上教習中、ちょっと強い風が吹いたとき、髪が顔に・・・ペタっ。

口紅をつけていたので髪がくっついて、顔にかかったままになってしまいました。

サッと手ではらえばいいのだろうけど、左手はアクセル、右手はハンドルをもっているので、どうしようもありません。

軽いパニック状態です。

今だったら、ハンドルやアクセルから一瞬 手を放し、惰性で走っている間にサッとするのなんて、なんでもありませんが、なにせ教習中です。

そんな余裕はまったくなく、信号で停まるまで視界半分で走っていました。

でも、こういうときに限って、青信号が続くんですよね。

そして、雨の日、一度だけ、小雨が降った日のことです。

助手席に乗っている先生に、「ワイパーは?」と言われ、ハッとしました。

ワイパーを動かすレバーは、ハンドルの左側にありますよね?

そうなんです、手動装置から手を放す余裕のなかった私は、タイミングをうかがいにうかがって、やっとの思いで手を放し、ワイパーを動かすことができました。

今、思えば、とってもおかしな話です。

イラスト:ふくいのりこ 

まだ、車の免許をもっていないころ、まわりの車いすの先輩方に、

「車が運転できるようになったら、生活が変わるよ。移動手段に制限のある車いすユーザーにこそ、車は必要なんだ」と、言われていました。

当時は、「そうなんだぁ」くらいにしか思っていませんでしたが、今は、その意味がよくわかります。

車いすでも、便利な道具のお陰で、できることが増えました。

若い車いすユーザーの方には、楽しいことがたくさんあるので、もっともっと外に出てほしいです。

なんだか、取り扱い説明書のような記事が続いていますね。

次回は、車いすでの移動について、私の思っていることを書いてみようと思います。


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