《17》 病院のベッドで見た斜めドラムの衝撃
- 樋口彩夏
- 2013年5月20日
- 読了時間: 4分
みなさん、こんにちは。
バリアフリー<BF>とユニバーサルデザイン<UD>を通して 1日を追う回も、3回目となりました。
「ちょっと飽きてきたよ〜」と言われてしまいそうですが、続けます♪
前回、勉強して働いて、きっといい1日だったと思うので、今回は自宅に帰りましょう。
<UD> 帰宅・・・人を感知して点く電気
「今日も一日がんばったなぁ〜」と家に着いたら、玄関の電気がピカッ!(あ、私の住んでいる家ではありません。)
そう、人が近づくとそれを感知して点灯する、人感センサーのついた照明です。
これが普及し始めたのは、いつ頃だったでしょうか。
はじめて“近づいたらピカッ”を体験したときは、まだ小学生だったと思いますが、「黒子さんがどこかに隠れて見ていて 電気のスイッチを入れてくれたのでは?」と不思議に思ったものでした。
玄関や廊下の電気をはじめ、水洗トイレや手洗い場の蛇口などにも、人感センサーは使われています。
玄関外につける場合、防犯対策にもなります。
手が不自由で蛇口をうまく扱えない、目が見えなくて 電気のスイッチを探すのに一苦労、という方だけでなく、誰にとっても便利なUDのひとつですね。
<UD> 洗濯・・・ななめドラム式洗濯機
洗濯槽が縦型の洗濯機にくらべて、洗濯物がとり出しやすい洗濯機です。
車いすで立つことのできない私は、縦型の洗濯機に身をのりだすことができないため、洗濯物をとり出すことができません。
パナソニックが、まだナショナルと呼ばれていた2003年。
私は中学2年生、ちょうど病気になり入院したばかりの頃でした。
その年に発売されたドラム式洗濯機のCMが、とても印象に残っています。
私の興味をひいたのは、縦型の洗濯機が主流だった当時にドラム式、という珍しさではなく、別のところにありました。
ななめ30度に傾けられた洗濯槽から、洗濯物をとり出そうとする3人の人。
洗濯機に向かう3人を横から見る構図で、手前から、
・保育園児くらいの 女の子
・車いすに乗った おじいさん
・30代と見られる エプロンをつけた女性
が それぞれ手をのばし、無理なく洗濯物がとれることを表わしたCMでした。
ドラム式洗濯機の優劣は置いておくとして、その一瞬の画を見て、目が釘づけに。
当時は、まだ自分が歩けなくなるなんて思ってもいない段階だったので、“だれもが暮らしやすい社会”など、深くは考えていませんでした。
でも、小学生のときの社会科や道徳の授業、発達障害の友人がいたことをきっかけに、
「いろいろな人が暮らしているはずなのに、健康な人に焦点をあてた社会なのは、なぜだろう?」
という、漠然とした疑問をかかえていたのも事実です。
中学2年の夏、突然 倒れて 救急車で病院に運ばれ、長い入院治療のスタートを切ったばかりの私は、昼間は強がっていたものの、これからの不安に押しつぶされそうで悶々とした日々を送っていました。
そんなときに病院のベッドから見た、テレビCMのワンシーン。
“大人も子どもも、お年寄りも障害者も、みんなが使いやすい”、その発想が、今までの漠然とした疑問の答えのような気がしたのと同時に、ほんのちょっとだけ前向きな気持ちになれたのでした。
そこは、整形外科の病室だったので、寝たきりの私のほかにも、一時的だったり一生だったり 期間や程度の差こそあれ、どこかしら身体の不自由な方がたくさんいました。
私のいた病室は、病気や手術・不便などのネガティブな言葉を感じさせないくらい、明るくて前向きな方の集まった、笑顔のたえない病室でした。
そんな彼女たちも、ときには涙を流し 夜を明かすこともあります。
私も眠れない夜が何度あったことか・・・。
でも、だからこそ、彼女たちの笑顔は輝いていました。
病院という守られた環境では困ることはなくても、一歩 社会に出れば、そうはいきません。
「“みんなが暮らしやすい社会”をつくりたい!」
そんな私の想いの原点は、今 思えば、ここにあったのかもしれません。
数十秒という短いCMの一瞬の画から、ここまで想いを巡らせた自分にも呆れてしまいますが・・・(笑)
CMを見るのが好きな私の中でも、とくに強く印象に残っているCMです。
でも、あの一瞬の画の印象が強すぎて、その前後がまったく思い出せません。
今回これを書くにあたって、動画を探してみたのですが、見つからなくて残念・・・。
今 見ると、当時とは また違った印象をうけるのだろうなぁ。
ひゃ〜、UDの話だったのに、つい当時を思い出して 熱くなってしまいました。
今回で1日がおわる予定だったのですが、また次回。
今度こそ、「おやすみなさい♪」が言えるようにしたいなぁ。

イラスト:ふくいのりこ
Comments