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《21》 最初は「異常なし。様子をみましょう」

  • 樋口彩夏
  • 2013年6月17日
  • 読了時間: 4分

8月2日 土曜日。

本番(地元のお祭りでのステージ演奏)まで、あと2日。

痛みでほとんど眠れない数日を経て、診察の日になりました。

うちの近所には、3次救急まで対応する 大きな病院が2つあります。

大学病院に行くほどではないだろうと、そのうちの もうひとつの病院へ行き、整形外科を受診しました。

部位は忘れましたが、おそらく骨盤や腰椎付近のレントゲンを撮り、診察を待ちます。

長い待ち時間の末に出た医師の診断は、「異常がないので、様子をみましょう。」というもの。

実は、数日前にも個人病院の整形外科を受診していました。

そこでも、同じ診断。

「重い楽器で負担がかかっているのでしょう。太鼓をもつ時間を減らしなさい。」と言われただけでした。

その後 しびれが出てきたので、大きな病院を受診してみよう、という経緯があったのです。

私は、“痛みやしびれの程度からして、異常がないはずはない。”と診断に疑問をもちましたが、明後日のステージ演奏のことで頭がいっぱいだったので、“これで練習にもどれる!”と内心ホッとしていました。

しかし、母は納得がいかなかったようで、「詳しい検査をしてほしい」と医師に訴えていました。

それを受けた先生は、「検査をするとしたら、MRIでしょう。」と、しぶしぶ検査をしてくれることに。

予約の空いている一番近い日、3日後の8月5日にMRIの予約を入れてもらい、その日は病院をあとにしました。

その足で部活へ行き、最終調整。

痛む足腰になるべく負担をかけないよう、太鼓を台に乗せて かかえなくていい状態にし、演奏だけ練習に参加していました。

マーチングの動きには多少の不安が残るものの、演奏は無事に仕上がり、あとは本番を待つだけ。

8月4日 月曜日。

身体の不安をかかえたまま迎えた本番の日。

朝 目が覚めた私は、いつものように立ち上がろうとするも・・・・・・あれ??!

“立てない・・・。”

右足を一歩 踏み出したと思ったら、崩れ落ちるように 床へ倒れ込んでしまいました。

ひとりでは立ち上がれません。

母と弟に支えられて、とりあえずソファへ座ります。

なにが起こったのか 状況がのみ込めずにいましたが、頭の中は“午後からのステージをどうするか?”の一点のみ。

パーカッションは人数が少なく、他のパートから応援にきてもらっていたので、代わりがいなかったのです。

でも、立つこともできない この状態で、マーチングなど できる訳がありません。

普段の私なら 這ってでも行くところですが、諦めざるを得ない状況に追い込まれていました。

部活のみんな、とくにパートには迷惑をかけてしまうので、「申し訳ない」という思いは当然ですが、なんと言っても、この日のために 毎日、毎日、たくさんの練習を重ねてきました。

私自身、どうしてもステージに立ちたかった・・・。

身を切るような想いで受話器をあげ、番号を押し ———— プルルルル・・・・。

顧問の先生に電話をかけます。

「今朝 起きたら、ひどい痛みで立つことすらできなくなってしまいました。今日は出られそうにありません・・・。」

すると、顧問の厳しい一言が。

「ふざけるな!パートリーダーで休むヤツがどこにいる?お前は、そんなに無責任なヤツだったのか!見損なった。」

その言葉を受け、反射的に出た一言。

「分かりました、本番には出ます!でも、直前にしか入れないので、その旨をパートに伝えてください。」 

ガチャ。

電話を切って、激しく後悔。

“この状況で行くって言っちゃったよ・・・。どうしよう・・・・・・。”

私なりに 一生懸命、部活に取り組んでいたつもりです。

パートリーダーは3年生が務める中、パーカッションだけは2年生の私が務めていました。

日頃の練習はもちろん、そんな頑張りも見てくれているはず。

痛みを押して練習をしていたことも知っているし、余程のことだろうと 顧問も理解を示してくれるだろう。

そう信じていた私が甘かった・・・。

でも、顧問の言うことも理解できます。

前もって「出られない」と言うならまだしも、本番当日に言ったのでは 打つ手も限られてしまいます。

まさか倒れるなんて思ってもいなかった、というのが正直なところですが、前々から痛みがあったのも事実。

自己管理ができていなかった、と言ってしまえば それまでのこと。

ついカッとなってでた言葉とはいえ、一度 「行く!」と言ったからには、“ステージ、最後までやりきってやる!”と意地になってしまいました。

本番まで あと5時間。

つづく・・・。

イラスト:ふくいのりこ 


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