《26》 14歳に訪れたがん
- 樋口彩夏
- 2013年7月24日
- 読了時間: 3分
8月末
大学病院の整形外科へ移り、2週間が経とうとしています。
病院のベッドで横になり、代わり映えのしない景色を眺めて過ごすうちに、2学期が目前へと迫ってきました。
時間の流れに逆らうように私の心の色は、相変わらず昼と夜とで明暗はっきりと分かれたまま。
それでも、“学校へ行きたい!”という願いは、日に日に大きくなっていきました。
わずかな希望を見出すように、夏休みの宿題に取り組みます。
その成果は、寝たままでもきれいな文字を書けるようになるという、思わぬカタチで表れました。
8月4日に救急車で病院へ運ばれてから、約4週間が経った8月末。
今もつづく痛みとしびれ、突然歩けなくなった原因が、いくつもの検査を経て明らかになりました。
病名 : ユーイング肉腫
骨や神経などにできる、悪性度の高いがん。
小児や十代に多く、簡単に言えば「子どもがなるがん」です。
抗がん剤や手術、移植などの厳しい治療が必要で、1年ほど入院をしなければならないと説明を受けました。
夏休みの宿題どころではなくなり、9月に行われるマーチングの大会に出られないことも確実に。
そんなこと、倒れた時点で分かってはいましたが、あれだけ一生懸命やっていた部活です。
“私の考え過ぎなんじゃないか・・・? いや、そうであってほしい!”
と、わずかな望みを抱いていたところに、医師からの告知によって現実を突きつけられました。
一昔前まではタブーとされていた、本人へのがんの告知。
今では積極的に告知をする動きもありますが、事が事だけにためらう方もいらっしゃると思います。
中学2年生の少女が受け止めるには、重たすぎる現実かもしれません。
しかし、その告知は自ら望んだものでした。
原因が分かるまでの間、私にとって1番のストレスとなったのは、部活に行けなくなったことでも、痛みや動けなくなったことでもありません。
もちろん、それはそれで辛いことではありましたが、1番ではなかったのです。
“私の身体で、いったい何が起こっているのだろう?”と悶々とする夜がつづいた4週間。
なにが1番 私を苦しめたのか———。
それは、「現状を裏づける理由が分からない」、これに尽きます。
突然歩けなくなって、四六時中 痛む足――その根拠は何? なぜ、このような状況に置かれているのだろうか?
その“なぜ?”が医師からの告知によって明らかとなったのです。
「な~んだ、そうだったのか!どおりで痛いはずだ。」
と、ずっと解けなかった数式が解けたときのようなスッキリ感。
そのときは、がんだったことに対するショックなどは全くなく、
「治療をしないと命がないのなら、やるしかない。すこしでも早く部活と学校に戻れるよう、即治療だ!」
という心境でした。
14歳という発病した年齢から考えて、治療をしないという選択肢はありませんでした。
それは、私を含め、医師や両親も同じです。
ユーイング肉腫は、悪性度も高く、進行も早い。
それに加えて、下半身や排泄機能などの神経を複雑にまき込み、とても難しい場所にありました。
一刻もはやく治療を!という状況だったので、告知が先か治療が先かというくらい慌ただしく治療がはじまりました。
つづく

イラスト:ふくいのりこ
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