《32》 患者は自分の病態を正しく知っているか?
- 樋口彩夏
- 2013年9月16日
- 読了時間: 5分
先週末、ひさしぶりに熱がでて寝込んでしまいました。
明日はお休みだ〜♪とルンルン気分はどこへやら、2日間、家でぐったり。
普段でさえ「よっこいしょ」のかけ声がないと動けないので、こうなると寝返りをうつのもやっとという状態に。
寝込まないように適宜休むのも自己管理の内だよなぁと反省しつつ、健康で過ごせることってありがたいと再認識した次第です。
さて、前回、
“今のがん医療に足りないものはたくさんあると思うけれど、
周りに何かを求める前に、私たち患者自身も変わらないといけないんじゃないか?”
私はそう思う、というところまで書きました。
これだけを聞くと、同じ患者の立場で苦労も知っているはずなのに、どうしてそんなに冷たいことを言うのだろう?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、けっして冷たく突き放しているわけではなく、とても温かい気持ちからきています。
では、なぜそう思うようになったのか。
がんというのは突然やってきて、私たちが当たり前と思っている日常を奪い去っていきます。
体調不良からはじまり、予期しない困難が次々と押し寄せる――
もし、あなたががんと診断を受けたら、どのように思い、どんな行動をとりますか?
医師から「あなたは、がんです」
と言われたとき、「まさか、自分が?」と驚き、落ち込んでしまうかもしれません。

自宅にもどり冷静になるにつれ、先ほどの驚きが「本当なの?」という疑問に変わる方もいることでしょう。
ほかの医師の診断を仰ぐため、セカンドオピニオンを受けるも同じ診断結果。
腹をくくって治療をしよう!と決意したのはいいが、自分にはどんな治療が合っているのだろうか・・・。
化学療法に手術、放射線治療、移植・・・はじめて聞く言葉に囲まれて頭が混乱してきます。
なるべく副作用が少なくて、期間も短く、確実にがんを治したい――。
費用も抑えたいけど、命には代えられないか・・・。
真剣に自分の人生を見つめ直すからこそ、さまざまな要望がでてくるのでしょう。
仕事や学業のある方は、しばらくの間、本業を休まなければなりません。
職場や学校には、どのように説明をしますか?
家族を支える立場の方にとっては、経済的な問題も切実なことだと思います。
治療がおわってからも、定期的に病院へ通わなければいけません。
がんは治っても、後遺症に対する治療が続く方もいるでしょう。
また、治療後だいぶ経ってから、2次的な病気が発生することも十分考えられます。
これだけ多種多様な問題がでてくると、頭を抱えたくもなります。
あれも足りない、これもしてほしい、周りが理解をしてくれない
・・・などなど、つい受け身になってしまいがち。
私もそういう時期がありました。
でも、ちょっと見方を変えてみると・・・。
私たち患者は、きちんと自分の病気を把握できているでしょうか?
治療内容はどうですか?
「どこに、どういう病気があったから、こういう治療をした。
その治療は、こういう効果と副作用が予想されていて、結果はこうなった。
今は、これはできて、あれはできない。こういう手助けがあれば、これはできるようになる。
今後はこういうことが想定されるから、どう対応している」
はじめて会う人にも状況を理解してもらえるように、自分のことを説明できますか?
医者ではないのだから、そこまで詳しく知らなくてもいいのでは?と思う方もいるかもしれません。
でも、がんになったのは私たち自身。
治療を受けるのも、副作用や後遺症をかかえて生きていくのも私たちなのです。
主治医がずっと同じとは限らないし、自分の身体なのだから自分で管理をするという意識がもっと必要なんじゃないかなぁと思います。
学校や職場などにもどる際、周囲の理解をえられないことも、きっとあるでしょう。
患者の立場から見れば、とても悲しく、さみしいことです。
でも、相手の立場に立ってみたら、気持ちよく迎えたいという思いはあっても不安がぬぐえないというのが当然のところだと思うのです。
そこで、私たちがその不安を解消できるような説明ができたら――。
解消できなかったとしても、こちらの現状をきちんと伝えることで、建設的な話し合いのできる土壌ができるのではないでしょうか。
まずは、自分の病気や治療をきちんと把握し、受け止める。
それができてこそ、主体的に治療を考え、その後の後遺症とも正面から向き合えるようになるんじゃないかなぁ。
そうやって自分にできることを最大限やった上で、周囲に理解を求めることができるのだと思います。
先に挙げた、一見つながりのないように見える問題の山々・・・。
こう考えると、解決の糸口が見えてくるような気がします。
もちろん、社会の理解やさまざまなものが足りない現状は、身をもって理解しているつもりです。
私たちが変わるだけでは、どうしようもできない現状があるのも事実。
でも、不満ばかり言っていては、なにも変わりません。
だったら、自分が変わればいい♪ これが、私の結論です。
私も、はじめからこんな風に思えたわけではありません。
ふり返れば、がんや障害に甘え、それを言い訳に目の前のつらい現実から逃げていたときもありました。
厳しく聞こえるかもしれないけれど、まずは私たち患者がもっと精神的に自立していくことが大切だと思います。
そのほうが積極的に人生を楽しみに行ける、そんな気がするのです。
だれだって、がんになりたくてなったわけではありません。
治療を終えたとしても、再発などの不安はついてまわります。
けれども、たくさんのつらい思いを乗り越えてきたからこそ、うんと幸せな人生を歩んでほしい。
今までに流した涙を乾かすくらい、心からの笑顔で幸せをつかめるように――。
私自身もそんな人生を歩みたいなぁ。
ちょっと格好をつけてしまいましたが、私もまだまだ修行が足りません。
諸先輩方の大きな大きな背中を追いかけている最中です、前進あるのみ♪
最近の私の目標――強くてやさしい人になる!

イラスト:ふくいのりこ
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