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《41》 デリケートで、とても大切な問題――排尿のこと

  • 樋口彩夏
  • 2013年12月4日
  • 読了時間: 4分

前回、排泄障害とは思いのほか深い問題だった、ということを書きました。

とてもデリケートな問題だけに、あまり表に出ることもありません。

このことに縁遠い方には、不快な思いをさせたり、すこし驚かせてしまったししたかもしれません。

しかし、大切な問題です。

「尿意がない、出せない、我慢できない、漏らしてしまう・・・」

この状況に甘んじていたら、日常生活もままなりません。

お手洗いのたびに漏らしていたら、洗濯と着替えだけで、1日が終わってしまいます。

そこで、排尿について、障害をどういう方法で補っていくのか、お話しようと思います。

ただし、いろいろな管理の仕方があって人それぞれであること、“私の場合”に限るというお断りを添えておきます。

その前に、排尿について、おおまかに解説をします。

尿とは、血液中の身体にとって不要なものが、腎臓でろ過されて出来たものです。

1日につくられる量は、約1~2リットル。

そうして出来た尿は、尿管(にょうかん)を経て、一度、膀胱(ぼうこう)に蓄えられます。

膀胱に溜めておける量は、約400ミリリットル。

このとき、膀胱はふくらみ、尿道(にょうどう)は漏れないようにキュッと締まっている。

このように溜めておくことを、「蓄尿(ちくにょう)」と言います。

多くは、膀胱に150ミリリットルほど溜まると尿意を感じ、手筈をととのえて排出することになります。

このとき、膀胱は縮んで、尿道は開く、と蓄尿とは逆の作用が働いています。

これが、「排尿(はいにょう)」ですね。

まとめると、血液中の老廃物は、腎臓→尿管→膀胱→尿道の順をたどり身体の外へ排出される、ということになります。

脊髄が傷ついたことに因る排尿障害の場合、「蓄尿」・「排尿」ともに機能しない場合が多いそうです。

私の場合は、「蓄尿」には障害がないけれど、「排尿」の機能は完全に失われています。

そこで、どう補っていくのか。

一番スタンダードな方法は、“導尿(どうにょう)”。

私も排尿管理への入門は、導尿でした。

これは、尿道にカテーテルという外径5ミリほどの細い管を挿入して、膀胱に溜まった尿を体外へ排出する方法です。

水が溜まっているビニール袋にストローを刺すと、そこから水が出てくるかと思います。

導尿とは、そんな感じ。とってもシンプルな方法です。

では、いつ導尿をするのか?

尿意がないので、導尿をするタイミングを身体は教えてくれません。

ならば、時間を決めて、定期的にしちゃえばいい!

これで、解決です。

しかし、この導尿が通用するには、尿量が安定していることが条件となります。

なぜならば、尿意がないから。

膀胱の許容量をこえる量の尿が想定外につくられると、一般的(蓄尿×、排尿×)には漏れてしまいます。

それは、困る!

でも、蓄尿の機能が残っている私の場合、膀胱がパンパンになっても漏れないのです。

漏れないということだけ考えれば、私としては大歓迎。

しかし、医学的な観点から見ると、漏れないことのほうが厄介なのだとか。

泌尿器科の主治医いわく、

膀胱が満杯になっても漏れないとなると、膀胱に入れなくなった尿は行き場を失う。

すると、尿管をさかのぼって、腎臓へ逆流してしまう、らしい。

尿とは、身体に必要のないものだから、排出するはず。

それが体内へ逆流すると、細菌に感染して熱が出たりしてしまいます。

それは、もっと困った!

漏れるほうが、まだマシということになります。

私は、尿量が極端に増減し、安定していません。

これは、抗がん剤による副作用で、腎臓の血流が安定していないことに起因します。

そこで、導尿から別の方法へ切り替えました。

“バルーンカテーテル留置(りゅうち)”

“導尿”は、お手洗いの都度、カテーテルを挿入し、終わったら抜く手法。

“留置”は、一度入れたカテーテルを、1月とか2週間、夜だけなど、一定期間、入れっぱなしにしておきます。

そうすることで、尿は膀胱に溜まることなく、カテーテルをとおして身体の外へ排出されていく。

これで、尿量が不安定な私でも、腎臓への逆流を防ぐことができるのです。

その尿は、カテーテルにつながれた専用の袋に溜めておき、適当な間隔でお手洗いへ流します。

ただ、長い間、留置しておくのは、あまり良いことではありません。

私の排尿管理は、まだ確立しておらず、とりあえず留置で様子を観ている、という感じです。

導尿と留置を挙げましたが、ほかにも膀胱に穴をあけるなど、さまざまな管理の方法があります。

その中から、自分の身体や生活スタイルに合った排尿管理を身につけることが、とても大事!

一方では、身体に異物を入れることから、常に感染のリスクと隣り合わせ、という難点もあります。

しかし、きちんと管理さえすれば、それほど怖がる必要はありません。

トイレの心配がなくなることで、心に余裕が生まれたり、気兼ねなく外出ができるようになったりなど、得られるもののほうが大きいはず。

人間らしい生活を送るためには、排泄管理の確立が欠かせません。

それがクリアになるだけで、見える世界も明るくなる気がします♪

イラスト:ふくいのりこ 

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