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《59》 もっと人を見てほしい「お役所仕事」

  • 樋口彩夏
  • 2014年5月4日
  • 読了時間: 4分

お役所仕事――。

どうして、ああも杓子定規でタテ割りな対応しかできないのでしょうか?

私は以前、役所に対して、このような見方をしていました。

なぜ、そうなってしまうのか。

それを変えることはできないのだろうか。

この問題意識をきっかけに、行政の中で働きはじめ、1年が経ったところです。

すこしずつ内情が見えてくると、役所に対する見方もずいぶんと変わってきました。

市民として漠然と抱いていた不満が、すこし解消されたように思います。

その反面、役所事情を理解したがために生まれたジレンマも出てきました。

まずは、一般市民目線の私。

役所というと、私たちの生活に近くて遠い、でも切ることのできない、微妙な距離感に存在します。

14歳で病気になってからは、さまざまな手続きや申請、相談事など、なにかとお世話になることの多い場所でもあります。

とりわけ居住地の市役所に相談や申請に行くことは、数多くあります。

どんなときに行くのかは、下記のとおり。

車いすをつくりたい、修理をしたい

車の免許をとったから運転ができるように改造をしたい

腰のコルセットや足の装具が必要になった

入浴や家事、通院などを手伝ってほしい

床ずれ防止のベッドマットなど福祉用具を借りたい

などなど。

日常生活のさまざまな場面で、市役所に出向かなければなりません。

ここで起こるのが、俗に言う“たらい回し”。

窓口は1つの課でも、その中で細かく担当が分かれているのです。

先の5つの案件は、実際に私が相談した事例です。

車いすはAさん、装具はBさん、入浴介助はCさん……。

このような具合で、6人、担当が替わりました。

スムーズに交代ができれば、さほど苦にはならなかったのかもしれません。

しかし、接客中だったり電話対応中だったり休みなど、すんなり運んだケースがないのです。

そのたびに、待つか出直しとなる訳です。

また、気を利かせて、他分野の相談に乗ろうとしてくださる方もいます。

こちらは、当然わかるのだろうと思って事情を話し、質問に答えます。

それなのに聞くだけ聞いて、「分かりません、担当に代わります。」というのは、あんまりではないでしょうか。

本来の担当者にそれを引き継いでくれればいいのですが、知識がないから事の顛末も頭に入らないようで……。

結局、おなじ話をしなければならないのです。

それでも、潔く「分かりません、代わります。」と言ってくれるのなら、まだ良いです。

分厚い資料をめくりながら、曖昧な知識で答えられたときには、厄介事へ発展する可能性がおおいにあります。

Dさんに言われたとおり、他所の手続きを済ませて、元の担当課にもどって来たときのことです。

本来のその分野の担当者が対応にあたると、他所での手続きに不備があると言うのです。

私は、「Dさん直筆+捺印のメモ」を見せ、言われたとおりにしていますよね?と確認をするも、メモのとおりではあるが違うものは違う、とのことでした。

他所での手続きをやり直して、また出直すことになりました。

これは、余談ですが、「Dさん直筆+捺印のメモ」は、役所で痛い目にあった経験から学んだことです。

私のメモだと、“メモが間違っている”と見られてしまいます。

でも、職員の手書きで、しかもサインではなく仕事用の印鑑であれば、こちらの聞き間違いを疑われずに済みます。

もしものとき、言った言わないの水掛け論を回避する術になるのです。

これだけ神経質になるからには、役所と相当なゴタゴタがこれまでにあったのだろうとお察しください。

数々の不手際は、私の役所へ臨む姿勢が甘いのか、運が悪かったのかと思いきや、そうではないようです。

担当課に行ったとき、その窓口で市民と職員が言い争いをしている光景をよく見かけます。

今になってみれば、「また、やってるわ〜」くらいで済みますが、当事者にとっては切実な問題です。

私だって、できることなら二度とお世話になりたくない、心情だけを取れば、そんな気持ちです。

担当課が管轄する市民サービスが多岐にわたっていて、専門性の高いことは容易に想像できます。

でも、それは役所側の問題であって、市民には関係のないことです。

私が持ちかけた5つの案件を役所から見れば、1つひとつがバラバラなのでしょう。

しかし、私にとっては、5つ全てが、日常の中でつながっているのです。

それぞれの問題に対して、専門的な視点から相談に乗ってくださるのは、とても心強いことです。

できることならば、それと同時に、その人の生活全体に目を向けた、総合的な視点も必要なのではないでしょうか?

障害を示す文言や書類ばかりを見るのではなく、もっとヒトを見てほしい、そう思います。

かなり主観に偏っていますが、あえて具体例を書きました。

次回は、障害のある一市民としての思いから離れ、行政で働いて変わった役所への見方に触れます。

イラスト:ふくいのりこ 


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