《94》 心からの「おめでとう!」をSさんへ
- 樋口彩夏
- 2015年5月11日
- 読了時間: 3分
5月、過ごしやすい季節になりましたね。
私の勤め先では、省エネのために軽装を促すクールビズがはじまりました。
職員の装いも黒い背広から白いシャツへと移り変わり、職場の雰囲気が明るくなった気がします。
仕事と体調管理で四苦八苦しているうちに終わってしまった、3月・4月。
そんな中でも4月には、半年前から心待ちにしていた一大行事がありました。
中学生の頃からお世話になっている先輩・Sさんの結婚式です。
私が中学2年生のとき、部活(ブラスバンド部・パーカッション)の指導をしてくださったのが、当時、高校3年生のSさんでした。
マーチングで担当している楽器が同じだったことから、先輩の華麗で力強いスティックさばきには憧れたものです。
演奏の技術面はもちろんのこと、パートリーダーとしての在り方にいたるまで、熱心で細やかな指導からは多くの学びを得られました。
まさに“熱血漢”という表現がぴったりの男性です。
また、先輩とのエピソードを語る上で外せないのは、発病当初のできごとでしょう。
私が病(小児がん・ユーイング肉腫)に倒れたのは、部活動に励んでいた同時期のことでした。
ステージ本番を終えた日の夜に救急車で運ばれた私は、突然の入院に不安を隠せません。
病床を一番に見舞ってくれたのは、顧問でも担任でもなく、Sさんでした。
今思うと、当時高校3年生のSさんは受験を控えた夏休みの最中で、部活も引退目前の追い込み時、とても忙しい時期だったはずです。
入院先の病院は電車等を乗り継ぐこと1時間半、土地勘のない街にあることから遠く感じたことでしょう。
真っ先にお見舞いへ来てくれた事実もさることながら、それらを思うだけで胸が熱くなりました。
入院が長くなると「早く部活に戻れるように」と、ドラムスティックや練習用パッドを持ってきてくださり、治療中どれほど心の支えになったことか…。
私にとってSさんは、当時も今も、尊敬する憧れの先輩です。
そんな先輩の結婚は自分のことのように嬉しく、一緒にお祝いができて幸せな気持ちに包まれました。
結婚式に参列したのは、25歳にして初めての経験です。
そういえば、これで冠(成人式)、婚(結婚式)、葬(お葬式)、祭(法事等)のひと通りを経験したことになります。
私は自身が小児がんを患ったことから、友人たちの旅立ちを見送ることが多く、気付けばお葬式に参列することが多くなっていました。
故人を偲んで流す涙は、尊いものです。
けれども、大切な人の希望に満ちた未来を想って涙を流せるのも、また幸せなことでしょう。
新郎新婦の親族をはじめ、それぞれの近しい人たちが集う場は、幸せいっぱいの空間でした。
感動の涙あり、笑いありの結婚式は、みんなの笑顔があふれています。
その時間を共有できたことへの感謝と、心からの「おめでとう!」をSさんへ。
やっぱりお祝い事は良いものだなぁと、しみじみ思い入りました。

イラスト:ふくいのりこ
Comments