《42》 小児がんとは何か
- 樋口彩夏
- 2013年12月17日
- 読了時間: 3分
私のもつ悩みの2大要素である、「脊損関係」と「小児がん関係」。
今回は、小児がんに関する悩みをとり上げようと思います。
私個人のケースだと、小児がんの一般的なところとは、かなり外れたところに限局されてしまいます。
なので、一般的なこと。
「小児がん」―― これもひとくくりに言うのには、すこし無理があるでしょう。
小児がんと言うとき、ひとつの病気を指しているわけではありません。
“大人がなるがん”と“子供がなるがん”は、まったくの別物なので、そう呼びわけています。
小児がんには、血液のがんもあれば、神経や骨、筋肉にできるもの、腎臓や脳などの臓器にできるものまで、幅広い病気が含まれています。
発症する年齢も違えば、病気の種類もさまざま。
そこから派生する問題も、その多様性にともなって多岐にわたります。
主な治療としては、抗がん剤による化学療法や手術、放射線治療、骨髄移植などが挙げられる。
それにともなって起こる副作用としては、以下のようなことが考えられます。
・髪の毛をはじめとする体毛が抜ける、吐き気、免疫力低下など
・心機能や腎機能など、臓器への影響
・身長が伸びないなどの成長障害
・生殖機能障害
・二次がん
治療が終われば治るものもありますが、その多くは病気が治ってからも、一生付き合っていかなければなりません。
また、治療後、何年何十年も経ってから出てくる合併症も存在します。
大人ががんになることと比較したとき、一番の違いはどこにあるのでしょうか?
私が思うに、小児がん特有の問題は、“治療後の人生が長い”ということ。
そして、身体が成長していく過程に、強い治療を行なうことによる弊害。
この2つに集約されているように思います。
人間において、子供という期間は、身体のあらゆる細胞が元気いっぱい。
正常な細胞はもちろんのこと、がん細胞にも同じことが言えます。
そのことから、大人に対するがん治療よりも、強力な治療が求められるのです。
でも、それだけ強い治療ができるのは、子供ならではの強い回復力を併せもっているからにほかなりません。
とは言え、治療にともなう副作用は、大変なものです。
同じ治療をするにしても、身体のできあがった大人に施すのと、成長の途中における子供にするのとでは大違い。
強力な治療が子供の身体にあたえる影響は、計り知れないものがあります。
ひとりひとり成長の早さも違えば、治療をする時期も千差万別。
それに輪をかけて、症例が少ない。
いったい、どんな副作用や合併症が起こるのだろうか。
それに対して、どう対処するのが望ましいのだろう。
それぞれの状況に応じた対応をすることは、専門家をもってしても、とてもむずかしいことなのです。
小児がんというと、かつては不治の病と言われるほど、生存率の低いものでした。
発症した子供たちに残されたのは、ほんのわずかな時間。
まわりの大人たちは、その時間をどう過ごすか、それに焦点を当てていました。
しかし、ここ20〜30年の間で、小児がん治療にはめざましい進歩があった。
病種や進行度、できた場所によって差はあれども、7〜8割の子供たちが“大人”になれるようになったのです。
新たな治療法が確立され、多くの子供たちが生きる望みを持てるようになったのは、とても喜ばしいこと。
でも、“治るようになったからこそ、見えてきた課題”が、たくさんあります。
幼くして亡くなっていた命が、助かるようになった、今。
大病をのりこえた子供たちが、これから歩んでいく人生を考えてみたいと思います。

イラスト:ふくいのりこ
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