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《55》 障害者スポーツの魅力

  • 樋口彩夏
  • 2014年3月26日
  • 読了時間: 5分

ロシア・ソチで開催されたオリンピックとパラリンピックも、盛会に幕を閉じました。

2つの大会が終わり、あらためて感じたのは、マスメディアにとりあげられる時間に大きな差があるということです。

普段、あまりスポーツに関心のない私の耳にも、オリンピックの情報は自然と入ってきます。

その反面、パラリンピックについて知ろうとすると、意識的に情報をとりにいく必要がありました。

これほど情報の露出に差が出る理由は、どこにあるのでしょうか?

「興味がない」「数字がとれない」。これに尽きると思います。

マスコミは仕事柄、社会の人々の興味・関心に敏感です。

そのマスコミがパラリンピックをとりあげないということは、単純に、大多数の人は興味がないのでしょう。

かく言う私も、健常者だったころは、「パラリンピック、ふ〜ん。」くらいの関心しか持っていませんでした。

障害者になったら関心を持つようになったかと言えば、それも違います。

興味が出てきたのは2年ほど前、ごく最近の話です。

きっかけは、友人が元パラリンピック選手だったということを知ったとき。

もっと言えば、1年半前。

ぱっと見の体格を見込まれて、ある競技にスカウトをされてからなのかもしれません。

自分にとって、それくらい身近に感じられたとき、はじめて興味を持つようになりました。

それを考えれば、世間一般の人々がパラリンピックに興味を持っていないことも頷けます。

ましてや、“障害者”のするスポーツです。

障害者のイメージから、それにどれほどの競技性があるかを、疑いたくなる気持ちも理解できます。

しかし、パラリンピックも五輪と同じように注目されるべきだ、というのが私の持論です。

おなじように世界のトップを目指している選手たちの努力に、違いや差はありません。

むしろ、社会の関心が低いことから、厳しい財政事情で練習場所の確保にも苦戦するような状況にあります。

パラリンピックの選手たちは、日本代表という立場に似つかわしくない、劣悪な環境に置かれているのです。

世界情勢的に見ても、このまま無関心を放置してよい訳がありません。

されど、マスメディアも商売の一環でさまざまな事象をとりあげている以上、視聴率は無視できないと思います。

では、障害者スポーツが数字をとれるように、社会の関心を作っていくことはできないのでしょうか?

スポーツは、大きな大会を機にしたり、スター選手が現れることで、急に注目度が上がることがあるようです。

たとえば、サッカー。

今や、子供がなりたい職業ランキングで常に上位に入るほど、サッカーの人気は浸透しています。

2002年の日韓ワールドカップが大きな分岐点と言えるようで、放映権料の推移を見て驚きました。

前大会と比べて、10倍にもなったそうです。

それだけお金を払ってでも放送したい何かを、サッカーは持つようになったのでしょう。

女子フィギュアスケートや女子ゴルフは、浅田真央選手や宮里藍選手などのスター選手によって、より注目されるようになりました。

テレビをつければ、どのチャンネルにも「真央ちゃん」の顔が並んでいる、そんな時期もあったと思います。

これらに倣えば、障害者スポーツも、メジャーになれる要素があるのかもしれません。

大きな大会といえば、2020年のパラリンピックがあります。

スター選手と成りうる人は、きっと探せばいるでしょう。いや、いるはずです。

また、何かの注目度を高めるためには、マスメディアの力は計り知れません。

報道の仕方によっては、いかようにでも仕立て上げられるほどの影響力を持っています。

はじめは関心がなかったものでも、不意に見聞きしたことをきっかけに、興味を持つことだってあるはずです。

そのきっかけは、多ければ多いほど、新たな関心への入口になります。

恥ずかしながら、おなじ障害者である私自身、たかが知れていると、障害者スポーツを侮っていました。

障害者スポーツに対する関心の低さは、知らないがゆえに魅力が伝わっていないだけなのかもしれません。

本来であれば、純粋にスポーツとして、競技性や身体能力の高さに惹かれて興味を持ってもらうのが理想だと思います。

しかし、パラリンピックという言葉だけが先立って、肝心の内容があまり知られていないのが現状です。

まずは、障害者スポーツをたくさんの人に知ってもらうことから始まるのではないでしょうか。

人々がもつ興味の琴線は、さまざまです。

パラリンピック選手の背景は、障害を乗り越えている分、五輪の選手よりもドラマチックでしょう。

そんな選手ひとりひとりの人生模様に、心を動かされる人がいたって良い。

車椅子や義足のメカメカしさに惹かれる人がいても良い。

障害を補う人体力学の不思議を観察するも良し。

障害の数を数えて、夏休みの自由研究にしたって良い。

関心を持つきっかけは、なんでもよいのです。

とにかく、たくさんの人に観て、感じて、興味をもってもらいたい。

そのために、マスメディアにも、さまざまな切り口で報道してほしいのです。

社会の認知度が低い障害者スポーツを、メジャーにする——。

そんな心意気とともに手腕を発揮したいというマスメディアの方、いませんか?

2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで、あと6年。

今から、どんどん発信していけば、障害者スポーツが社会に認知される日も、そう遠くないのではないでしょうか。

イラスト:ふくいのりこ 

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