《65》 雨の日の車いす
- 樋口彩夏
- 2014年6月13日
- 読了時間: 3分
私の住んでいる九州地方は、先週、梅雨に入りました。
天気予報を見ると連日、雨や曇りマークが、不安定な天候をあらわしています。
昨年と比べると1週間ほど遅い梅雨入りだけれど、ほぼ気象庁の予想通りだったようです。
しばらくの間、傘が手放せないお天気が続くことでしょう。
雨の日の必需品といえば、傘。
思えば、車いすの生活になって10年、傘を持ち歩く習慣がなくなりました。
なぜなら、傘をさすことができないからです。
車いすをこいでいると、常に両手がふさがっています。
自転車のように片手運転ができれば、傘をさすことも可能でしょう。
しかし、手動の車いすでまっすぐ進むには、左右のタイヤをバランスよくこがなくてはなりません。
一こぎずつ、傘を持つ手とタイヤをこぐ手を入れ替えていたら、危なっかしくて目も当てられない状況でしょう。
雨天時の外出で、私の頭に浮かぶ選択肢は3つです。
・多少、濡れてもお構いなし、そのまま出かける
・レインコートを着る
・出かけない
雨の程度にもよりますが、傘をさすことができない以上、レインコートを着るのが真っ当な判断だと思います。
重要なのは、レインコートの選び方です。
まず、大きな後輪と小さな前輪に、裾や袖を巻き込まないようなデザインである必要があります。
上下に分かれたタイプのレインコートがベストと言えるでしょう。
しかし、両下肢麻痺で立つことのできない車いすユーザーにとっては、着脱にけっこうな時間と労力がかかってしまいます。
梅雨の不安定な天気を考えると、実用的ではないかもしれません。
そこで私の見解は、サッとかぶれるポンチョ型レインコートがベターというところに落ち着きました。
また、雨に濡れないルートを考えるのも、一つの方法です。
風雨をしのぐことのできる自動車は、雨天時の移動手段にぴったり!
雨の日の運転では、フロントガラスをつたう雫を眺めながら待つ、赤信号の時間が好きだったりもします。
ひとつ難点なのは、駐車場までの経路と乗り込むまでの間に濡れてしまうということでしょう。
車いすを積み込まなければならないので、雨から逃げるように自動車へ駆け込むという訳にはいきません。
ごく稀に街で見かける屋根つきの車いす駐車場は、とても親切でありがたい物です。
入口までの導線にも屋根が設けられている施設を見ると、よく考えられているなぁと感心してしまいます。
公共交通機関での移動を考えるのなら、地下街の充実も歓迎されるのではないでしょうか。
鉄道網の発達した都心部では、地上に出ることなく、乗り換えや買い物まできるところも増えてきました。
天候に左右されない地下道は、移動に困難を抱える多くの人にとって、優しい場所なのかもしれません。
でも、私は車いす生活になってから、1度も雨に降られたことがありません。
正確に言えば、ひとりで移動をしなければならないときは、晴れか曇り、という具合です。
それだけ、周囲に助けられている環境にあるとも言えます。
よって、雨の日の私がとる行動は、「多少、濡れてもお構いなし、そのまま出かける」となります。
もし雨が降ったら……、雨具を用意していない自分が悪い、潔く濡れるまでの話です。
備えあれば憂いなし、雲行きが怪しければ雨具を持って外出をしましょう♪

イラスト:ふくいのりこ
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