《78》 車いすでも快適な服選び
- 樋口彩夏
- 2014年11月28日
- 読了時間: 4分
車いすユーザーの洋服選びはけっこう大変です。
市販されている洋服は、健常者が立って着ることを想定して作られていることがほとんどです。
それを座って着るとなれば、さまざまな不都合が生じてきます。
では、洋服に関して、車いすユーザーはどんな悩みを抱えているのでしょうか?
私が洋服を選ぶときに気をつけていることを、2回にわけて列挙します。
【ボトムス】
(臀部) ポケットや生地の縫い目、つなぎ目の段差
ズボンを選ぶときには、ポケットの位置や生地にも目を向ける必要があります。
なぜなら、長い時間、車いすに座っていると、おしりに体重がかかり骨張ったところに床ずれができてしまうからです。
床ずれとは、特定の箇所に過度の圧力がかかることで血流が滞り、皮膚が壊死することを言います。
普通なら床ずれができる前に痛み等を感じ、体勢を変えるでしょう。
しかし、両下肢麻痺者の場合、臀部の感覚もないことがほとんどなので、身体からのSOSに気づくのが遅れがちです。
さらに、麻痺によって脂肪や筋肉が乏しく、もともと血行が悪いことも、床ずれを助長しています。
座位で起きる床ずれの代表格は座骨。それは他より出っ張っているからです。
それと同じように、布のつなぎ目やポケットの縫い目に生じる段差部分にも圧力が集中し、床ずれを引き起こしかねません。
とくにジーンズなど、厚くて硬い生地の場合は注意が必要です。
定期的におしりを浮かせる動作・プッシュアップと合わせて、洋服にも気をつけたいものです。
(丈) ちょっと長めがちょうど良い
立位でちょうど良い丈でも、座ると短くなってしまうので、ズボンはちょっと長めを選びます。
立つことはないので、座って見栄えがする丈のほうがよいかなぁと。
スカートもちょっと長めと言いたいところですが、そうとは限りません。
経験則で言うと、タイトなものは立位の着丈から−7cm、座るとかなり短くなってしまうので、長めの方がいいのは間違いありません。
けれど、デザインによっては、立位よりも座位のほうが、長くなるものもあるようです。
ファッションに疎い私は、デザインから着た時のイメージがつかみづらく、やはり着てみなければ分かりません。
よって、試着は必須です。
座って着たときに好みの丈になるスカートを選んでいます。
特にスカートは、丈よりも大事なのは、車いすのタイヤに巻き込まないデザインだったりするのですが……。
【トップス】
(袖) 長袖はタイヤで汚れちゃう
車いすをこぐ際は、タイヤで袖が汚れてしまわないよう、気を遣います。
ノースリーブ、半袖、七分は気にする必要がないけれど、問題は長袖です。
中でも、コートが難しい。
セーターなどは前腕半ばまで腕をまくれば汚れるのを回避できるけれど、コートで腕まくりをする訳にはいきません。
私の答えは、「袖のすぼまったデザイン」のものを選ぶか「腕抜き」をする、この2択になりました。
腕抜きと言うと、黒無地で事務員さんがしている地味なイメージでした。
けれども最近では、日焼け防止のアームカバーなども含めカワイイものも多くあり、抵抗なくつけることができます。
何より嬉しいのは、袖のつくりを気にすることなく、好みだけでコートを選べるようになったことでしょうか。
(胸元のボタン) すこしの余裕を
シャツのようにボタンを前で留める洋服では、ちょっと注意が必要です。
ちょうど良いサイズでも、車いすをこいだ拍子に胸元のボタンがブチッ! なんてことがあり得ます。
ボタンが外れるほどにまで至らなくても、こぐ度に、ボタンとボタンの間が開いて下着が見えてしまうということは、しばしば起こります。
そんな事態を避けるためにも、肩を前後させやすく、肩から胸のあたりにゆったりとし余裕があるかどうかを確かめるようになりました。
次につづく……。

イラスト:ふくいのりこ
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