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《79》 車いす女子の足のおしゃれ

  • 樋口彩夏
  • 2014年12月5日
  • 読了時間: 5分

障害者の中には着たい洋服が着られずに、悩んでいる人も多いのではないでしょうか?

前回《78》につづいて、私が洋服を選ぶときに気をつけていることをご紹介します。

今回は、車いす女子ならではの悩みと工夫です。

【靴】

足が麻痺していると、靴を「履く」というより、「履かせる」感覚に近いように思います。

自分の意志で靴に足を入れる訳ではなく、足は動きもしなければ感覚もない、手を使って足の形をしたモノに靴を履かせてあげるのです。

慣れればなんてことはないけれど、それなりのコツが必要であり、履かせやすい形状を選ぶ必要もあります。

車いすからトイレや自動車などへの移乗を考えると、スニーカーのように底が平らで脱げにくい靴が重宝するかもしれせん。

でも、私はヒールのある靴が好きです。

ちょっと履くのが大変でも、足に負担なく履けるものであれば、その労は厭いません。

私が靴を履くときのコツは、足の指を伸ばしてあげること♪

足を靴に挿入する過程では、どうしても、麻痺した指は曲がっていってしまいます。

麻痺によって痛みは感じなくても、指が曲がったまま靴を履いているのは、きっと痛いはずです。

土踏まずの空間から足の裏にそって手を入れ、足の指を1本ずつ伸ばしてあげています。

これをするためにはスニーカーより、甲の部分が開いているパンプスのほうが断然向いているのです。

また、車いすのフットレストに乗せやすいヒールの形状というのもあります。

ヒールを履いたときに収まりのよい足の置き方など、工夫はいろいろあるのですが、靴選びには関係がないので割愛……。

【ストッキング】

女性の場合、ビジネスシーンでは欠かすことのできない、必須アイテムと言えるでしょう。

ストッキングは、ちょっと何かに引っかかった拍子に伝線してしまうほど、デリケートなものです。

そのため、扱いには細心の注意を払わなければなりません。

大きく分けて、3つの難関があります。

1.着脱時

私は以前、前屈ができず膝関節の動きも悪かったので、「リーチャー」という棒を使って靴下を履いていました。

リーチャーとは、先端が鉤状になって引っかけたり、物をはさんだりできる形状になった自助具です。

靴下のように丈夫であれば、問題なく使えてとっても便利!

しかし、ストッキングで使おうものなら、たちまち伝線してしまいます。

当時は頻繁にストッキングを着用する年齢ではなかったので、その折は母に手伝ってもらっていました。

今では膝の動きもよくなり、ひとりで履けるようになったので解決したけれど、他の人はどうしているのだろう?  という疑問は残ります。

2.車いすに座っているとき

ストッキングを履く人にとって、車いすには危険な箇所がたくさん潜んでいます。

最大の敵は、いたるところに存在する面ファスナー(マジックテーク、ベルクロ)!

座面や背中の張り具合を調整するのに重宝するため、大抵の車いすにあります。

ストッキングの伝線に関わってくるのは、座面、足部フレームに渡す足落下防止のレッグサポート、フレームカバー、ドリンクホルダーといったところでしょうか。

また、床ずれ防止で使っているクッションのバルブキャップや空気量調節の部品も、伝線の引き金になります。

まとめると、太ももより下の位置にある「引っかかるもの」を取り除く必要がある、ということです。

この理由から(ほかにも理由はあるけれど)、私はレッグサポートとフレームカバーはつけていません。

そして、クッションの上から布を垂らすように敷いて、太ももや膝裏に引っかかるものに足が触れないように工夫しています。

3.座敷などでの、いざり移動

食事に行った先のお店や人様の家へ上がる時などで、室内用車いすがない場合、外を走ったマイ車いすで上がるのは憚られます。

そんなとき、床に座ってズリズリと、いざって移動をすることがあります。

おしりを引きずると同時に、麻痺した足も引きずることになるのですから、それはもう大変です。

畳であれば、なおのこと気を遣います。

座骨の床ずれにストッキングの伝線、そんなことを考えながらの移動です。

《76》、《77》、《78》、今回と4回にわたって、障害者とファッションについて書いてきました。

障害があるために好きな洋服を着られなかったり、がんばって着てみたけれど床ずれができてしまったり、なんてこともあるでしょう。

でも考えてみれば、市販の洋服は立位で着ることを想定して作られているのだから、当然のことかもしれません。

その一方で、介護や福祉と銘打ったカタログやサイトに、洋服が並ぶことも増えてきました。

けれども、それらは、いかにも工夫しています! という感じで、お世辞にもおしゃれとは言いがたいものです。

そこに“好み”や“デザイン性”という観点はありません。

障害者にも、それぞれに洋服の好みがあるはずです。

福祉を冠した洋服ではなく、「フツウのお店で、フツウに洋服を選び、フツウにおしゃれを楽しみたい!」、そう思っているのではないでしょうか。

障害を理由におしゃれを諦めるなんて、ナンセンス。

カッコイイ! カワイイ♪ これ着たい! という楽しみが、障害者にも実現するようになってほしいと思います。

イラスト:ふくいのりこ 

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