《89》 抗がん剤で変わった髪質
- 樋口彩夏
- 2015年2月17日
- 読了時間: 3分
1月は行く、2月は逃げる、3月は去る――。
お正月が終わったかと思えば、2月も半ばを過ぎました。
3月もあっという間にやってくるのでしょう。
この時期は一段と時の流れを早く感じます。
先日、美容院で髪を切ってきました。
しばらく短いのが続いていたので肩にかかったくらいから、うっとうしくなり、バッサリ切りたい衝動にかられていました。
ずいぶん伸びたなぁと思っていたら、それもそのはず。
昨夏の骨折以来、半年ぶりの美容院でした。
ショートにするか、伸ばしてみるか迷ったけれど、天然パーマの具合を考慮し、もう少しのばすことになりました。
5~7センチメートルほど切っただけで、ほとんど印象は変わっていません。
そういえば、私の髪は、化学療法を機に生まれ変わりました。
唯一、治療をしてよかったと思えるのは、天然パーマが軽くなったことと言えるでしょう。
抗がん剤治療の副作用で髪の毛が抜けるのは、よく知られていることです。
薬によるダメージが髪を作る毛母細胞にも及ぶことから脱毛が生じるのですが、治療が終われば、また生えてきます。
以前と同じ髪が生えてくるかと思いきや、どうやら髪質が変わることもあるようです。
治療前の髪は、アフロと言っても言い過ぎではないくらいの強い天然パーマでした。
なにもしなければ、地肌から少なくとも10センチメートルは浮いて広がっていたような・・・。
しかも、真っ黒で剛毛。くるくる、うねうね、チリチリが混在し、毎朝、髪をまとめるのがひと苦労でした。
湿気の多い日や濡れたまま放置していると、目も当てられないほどの爆発具合に、自分でも驚いてしまいます。
「ストレートパーマ、かけていいよ。」
当時通っていた中学校は、校則でパーマが禁じられていました。
体育の授業(水泳)後、私の髪を見るに見かねた先生が発した一言は、当時の天パーの強さを物語っています。
しかし、治療後、新しく生えてきたのは、まったく違う性質の髪の毛でした。
色は前よりも薄い黒で、太さや硬さは、太くもなく細くもなく、剛毛でもなく猫っ毛でもない、ちょうどよい感じです。
肝心の天然パーマはというと、かなり改善しました!
美容師さんによると、これでも強い方らしいけれど、以前を思うと、これだけ軽くなれば快適そのものです。
アピタルの顔写真は梅雨の湿気対策でストレートパーマをかけているけれど、前の天パー度合いでは実現しなかった真っ直ぐさです。
抗がん剤治療から得た思わぬ副産物は、髪型を選ぶ楽しみを増やしてくれました。
化学療法を控え、髪が抜けることを考えると、気分も落ち込む人が多いと思います。
でも、髪の毛は再び生えてきます。
髪質の変化を楽しめるオマケ付きと思えば、脱毛期間も前向きに過ごせるかもしれません。

イラスト:ふくいのりこ
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