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《76》 車いすユーザー向けファッションショー

  • 樋口彩夏
  • 2014年11月13日
  • 読了時間: 4分

「障害者」と「ファッション」。

あまり聞き慣れない組み合わせかもしれません。

福祉や介護とのつながりが強い「障害者」という言葉から、「かっこいい」や「かわいい」、「おしゃれ」などのイメージを連想するのは、なかなか難しいように思います。

障害を理由におしゃれを諦める必要はないけれど、障害ゆえに着たい服が着られないなど、おしゃれへのハードルが高いのも事実です。

先月、そんな障害者とファッションの壁をとり去ってくれるイベントが九州で行なわれました。

“すべての人にやさしいまちづくり”を目標に掲げる福岡市が主催する「ユニバーサル都市・福岡フェスティバル2014」では、市政を推進する多様な催しが約1カ月にわたって繰り広げられます。

その一部に、ファッションショーがありました。

テーマは、「車いすユーザー特有の悩みを解消しつつ、座位・立位ともに美しいデザインの洋服♪」。

障害による問題点を解決しようとすると、デザインは二の次になりがちです。

機能性とデザイン性を両立させようとする心意気とそれを可能にする技術は、まさにプロの成せる技と言えるでしょう。

たくさんの工夫がつまった華やかな洋服の数々に、うっとりしてしまいました。

ファッションデザイナー・Aさんが手掛けた衣装に施された工夫をご紹介します。

「白いドレス」

ミニ丈のウェディングドレスを思わせる容相は、胸元のレースや裾のフリルがエレガントさを引き立てています。

特筆すべきは、スカートの丈。

座位を見ると何の変哲もないけれど、立位を見ると違いは一目瞭然です。

「前は短く、後ろが長い!」

前後の丈にあえて差を出したスカート部分は、裾のラインが斜めに流れています(門松の断面と言ったら洒落っ気がないけれど、横から見たらそんな感じ)。

"座ったとき、後ろ丈が上がってしまう"という悩みを解消するために、「斜め裾」は生まれました。

「斜め裾」が活躍するのは、車いすに座っているときだけではありません。

階段しかない場所など、お姫さま抱っこや背中におぶわれるときにも、後ろ丈が長いと重宝します。

常に座位で歩行困難の車いすユーザー女子には、うれしい工夫です。

さらに、お腹まわりをスッキリ見せてくれる効果もあるとのこと。

立位を前提に作られた既製服を座位で着ると、お腹まわりの生地がだぶついてしまいます。

それならば、座位でだぶつく部分をなくしてしまおう! という、大胆かつ斬新な発想から生まれたようです。

車いすユーザーならではの悩みを2つ同時に解決してしまう「前後斜め裾」、素晴らしい!

「ピンクのドレス」

ふわっとしたドレスが着たい――。

着ればいいじゃんでは済まない、車いすユーザー特有の問題に、“タイヤへの巻き込み”があります。

車いすとはいえ、タイヤのある乗り物に乗るときは、物が巻き込まれないように注意しなければなりません。

ひらひら、ふわふわしたスカートは後輪の大きなタイヤ、足首ほどのマキシ丈ワンピースは前輪の小さなタイヤに巻き込む可能性があり、注意が必要です。

でも、着てみたい! という女心に応えるべく考え出されたのは、「スカートに張りを持たせる」という工夫です。

張りのある生地を使うことで、スカートにボリュームを出しても車いすのタイヤに巻き込む心配のない、ふわっとドレスに仕上がりました。

スカートの裏地にも、ひと工夫。

裏地にはツルツルした生地が定番だけれど、あえて「滑らない生地」が使われています。

快適な座位姿勢を保つことが大切な車いすユーザーの場合、ツルツルした裏地は座位を保つことができなくなる可能性があります。

体幹機能が弱い人にとっては、転倒につながることも考えられます。

見えない部分だけれど重要な「滑らない裏地」は、まさに、かゆいところに手が届く工夫と言えるでしょう。

次へつづく……。

イラスト:ふくいのりこ 

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