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《77》 障害に関係なく、ファッションを楽しむ

  • 樋口彩夏
  • 2014年11月19日
  • 読了時間: 3分

10月、福岡市で「ユニバーサル都市・福岡フェスティバル2014」というイベントがありました。

市政“すべての人にやさしいまちづくり”を推進する催しの一つとして行なわれたファッションショーのテーマは、「車いすユーザー特有の悩みを解消しつつ、座位・立位ともに美しいデザインの洋服」です。

障害があるために洋服の選択が限られてしまうなど、障害者のファッションには課題が多いように思います。

そんな課題を解決してくれる“工夫”と“技術”がつまった洋服を、前回《76》につづいてご紹介します。

【青いジャケット】

着崩れてしまったり、窮屈だったりと、車いすユーザーにとってはやや着づらい洋服です。

車いすをこぐため、肩まわりを大きく動かすことが多いので、ジャケットは構造上、窮屈で仕方ありません。

腕の動きを妨げない工夫として、袖ぐりにゆとりのある「ドルマンスリーブ」を取り入れたものは、タイヤに巻き込まない程度に抑えられているのもポイントです。

袖丈も、車いすのタイヤにかからない長さなので、袖が汚れる心配をすることなく自走ができます。

また、「背中に隠しタック」があり、車いすの自走や前屈など、大きな動作がしやすくなっています。

座位によって、襟や前身頃のシルエットが崩れ、見た目が損なわれるのも悩みの一つです。

“立っても、座っても、キレイなライン”を目指して、着丈に工夫がされています。

立ち上がることのできない車いすユーザーは、座ったときにお尻にかかる長さだと、脱ぎ着に苦労します。

そこで行き着いたのは、「座位では腰丈・立位ではお尻が隠れる、絶妙な丈」でした。

ジャケットのきちんと感を保ちつつ、上半身の自由を奪わない開放的なデザインは、あっぱれ! の一言に尽きます。

【オレンジのセットアップ】

これには、先述の3着(前回《76》と今回《77》にまたがる)に挙げた工夫が集約されています。

腕の動きを妨げないドルマンスリーブ

タイヤにかからない袖丈

お腹まわりのだぶつきをなくす

スカート丈に前後差のある斜め丈

滑らないスカートの裏地

さらに、上下をわけたことで、より着やすい作りとなりました。

また、この衣装は今回のショーのために作られたので、華やかなデザインが特徴です。

車いすに乗っている際、目に留まりやすい肩には立体的な飾りを、顔まわりと膝あたりにはキラキラした装飾が施されました。

これらの洋服は、“障害があってもなくても、ファッションを自由に楽しんでほしい”という、ファッションデザイナー・Aさんの想いのもとに作られています。

車いすユーザー専用とした特別な服作りをするのではなく、健常者と障害者の共用ファッションを手がけることに重きを置いているそうです。

車いすユーザーの問題を解消する工夫が、いかにも見てとれるようであれば、「共用」には成り得ません。

工夫満載でありながらも、それを感じさせないさりげなさが不可欠です。

座位・立位ともに美しいデザインの洋服たちは、Aさんの想いを体現していました。

「既製服を作る際、さまざまな人が着ることを想定するだけで、より多くの人がファッションを楽しめるようになる。」

そう熱っぽく語るAさんのお話は、障害者におけるファッションの広がりを期待させてくれるものでした。

このような洋服が当たり前のように、お店に並んでいる日が来たらいいなぁと思います。

イラスト:ふくいのりこ 

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