《80》 グルメ情報に加えて欲しい「ちょっとした情報」
- 樋口彩夏
- 2014年12月11日
- 読了時間: 3分
食欲の秋なんて季節は通り過ぎ、すっかり冬になりました。
例年よりは遅い気がするけれど、我が家では暖房器具を稼働させたところです。
今、私の住んでいる街では、“食”にまつわるイベントが行なわれています。
「食の八十八ヶ所 巡礼の旅」
これは、市民の推薦によって選ばれた飲食店112店舗を、スタンプラリー形式で巡る企画です。
期間は、10月末から4月半ばまでの約6カ月間。
今年で6年目を迎え、恒例行事として定着した感があります。
しかし、私が今年の“巡礼”に気付いたのは、つい最近、先週の話です。
近所のラーメン屋で食事を終えてレジへ向かうと、そこには「巡礼の旅」冊子が積み上がっていました。
もう、そんな時期か〜♪ と、おもむろに冊子を手に取ります。
「ん……!? 10月からはじまっている……!!!」
すでに1カ月が経過しています。完全に出遅れてしまいました。
こんな風に言うと巡礼の常連のように聞こえますが、そんなことはありません。
毎年、スタンプを集めるぞ! と意気込み、冊子をもらうまではカンペキです。
けれども、常に冊子を携帯するほどの熱心さはなく、食事をした先が加盟店であると知って、「あ、巡礼忘れた…。」とガッカリするのが落ちです。
今年は、ちょっと趣向を変えて、外食先の新規開拓を図ろうと、巡礼の冊子を眺めていました。
閉じてA6開いてA5の冊子は、手のひらサイズです。
コンパクトながらも、見開きに4店舗の看板メニュー写真がドドンとならんだ誌面は、見応えがあります。
基本情報とおすすめポイントが記されていました。
おいしそうな写真にワクワクしながら読み進めていると、行ってみたいお店が出てきます。
でも、私のほしい情報は、どこにも載っていませんでした。
「車いすで行けるか否か――。」
いつもなら店舗に問い合わせるのだけれど、時間と労力を要するため、今はその気力がありません。
次の瞬間、私は巡礼冊子を閉じていました。
これって、巡礼加盟店にとって、すごくもったいないことだと思います。
たったひとつの情報が不足しているだけで、お客さまを逃してしまうのですから……。
車いす使用者だけを見れば、そう多くないかもしれません。
けれど、そこに高齢者や子連れ客もふくまれると考えれば、無視できる数ではないでしょう。
これは、飲食店にかぎらず、すべての商業施設に通じる話です。
全店舗が車いすをはじめとした、あらゆる人に対応している必要はありません。
行ける、行けない、の判断をするための情報を、提示してくれるだけでよいのです。
たとえば、すこし階段があるよ、2階だけどエレベーターあります等の一文があるだけでも助かります。
誌面の都合や視認性を高めるために、エレベーターや車いすマークなどのピクトグラムを用いるのもよいでしょう。
また、お座敷やテーブル、掘りごたつ、カウンター、小上がり等、座席形態もわかると、より選びやすくなります。
“段差あるけど手伝います”なんて書いてあったら、その心遣いにキュンとしちゃいます。
現状では、車いすで行けるお店探しは、骨の折れる作業です。
これだけインターネットが普及していても、結局は電話に頼らざるを得ません。
もし、お店のウェブサイトやグルメ雑誌に“ちょっとした情報”があったなら……。
今まで外食を諦めていた多くの人にも、お店を選ぶ楽しみが増えるのではないでしょうか。

イラスト:ふくいのりこ
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