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《81》 今年の“外来納め”

  • 樋口彩夏
  • 2014年12月17日
  • 読了時間: 4分

私は月に1度、かかりつけの大学病院を受診しています。

今年も残すところ、あと半月。

2014年の“外来納め”をしてきました。

大学病院では溢れんばかりの患者さんで、長い長い待ち時間が常態化しています。

複数の科を受診する際は、各科を効率よく回ることと、待ち時間を有意義に過ごす工夫が不可欠です。

10年の通院から導き出した、私の場合の最も効率のよい外来スケジュールをご紹介します。

今回、私の外来メニューはフルコース。

小児科に始まり、整形外科、麻酔科(ペインクリニック)、泌尿器科と、四つの診療科を受診しなければなりません。

1日かかること、間違いなし!

とりあえず、診察だけの科(麻酔科、泌尿器科)は後回しにしましょう。

採血やレントゲンなどの検査が予定されている科(小児科、整形)で、まずは検査から片づけるのが得策です。

(1)  小児科で採血

まず、検査結果が出るのに時間のかかる、採血からスタートです。

向かうは、小児科外来。

普通、採血は中央採血室で一括管理されていますが、小児科だけは特別のようです。

子ども用の遊び場を一角に設けた待ち合いスペースは、独特の雰囲気がただよっています。

たいてい、1人や2人、知り合いに遭遇します。

「○○ちゃん、ひさしぶり〜。」、「××くんのお母さん、ご無沙汰しています。」

お互い、長い1日になることが分かっているので、挨拶と「またあとで〜」の一言だけ交わし、先を急ぎます。

採血がおわったら、受付の人に一言――。「ほかの科が終わって、最後に来ます。」。

(2)  整形外科でレントゲン

次は、画像検査。

これに備えて、ノー金具ファッションで来院するほど徹底しています。

腰のコルセットは仕方ないけれど、ズボンや下着の金具、プリントのある洋服は身につけていないので、着替えの時間を短縮できます。

撮影を終えて整形外科の受付に戻ったら、「レントゲンおわりました。ほかの科から回ってきます。」と伝え、ひとまず退散。

(3)  泌尿器科の診察

では、検査結果が出るまでの間に、後回しにしていた科の診察を済ませてしまいましょう。

このころには順番も進んでいるので、実質の待ち時間はかなり短くなっています。

泌尿器科での楽しみは、人間観察。

七つの科がずらりと並んでいるフロアの端っこに位置しているので、見ていて飽きません。

もしくは、近くの廊下で医師の出待ちをしているMRさん(製薬会社の営業職)とお話して過ごすことも。

「お互い、待ちが長いですねぇ(苦笑)。」みたいな会話は、鉄板です。

診察のあとは、カテーテルや注射器、生理食塩水などの物品を携えて、泌尿器科は終了。

(4)  麻酔科の診察

本日のハイライト。

私の希望としては、長い外来の締めに“息抜き”で立ち寄りたいところですが、ここが妥当な順序でしょう。

14歳の発病当初から、強い痛みに悩まされてきました。

小児科でのつらい治療中、ストレッチャーに乗って麻酔科外来へ行くことが数少ない楽しみだった私にとって、麻酔科は今でも心のよりどころです。

痛み止めをもらうだけだけど、先生の顔を見ると、ホッとします。

待ち時間にすることと言えば、もっぱら本棚の整理♪

乱れたチラシをまとめ、医療雑誌は時系列に、おすすめっぽい本は最前列に置いて……と楽しんでいます。

なかでも、製薬会社と出版社が共同で刊行した「まとめ本」と医師向けの医療雑誌がお気に入りです。

(5)  整形外科の診察

ここまで来れば、あとはメイン2科を残すのみ。

受付に「もどってきましたー。」と伝えてから、順番を待ちましょう。

こんなに寄り道しているにも関わらず待ち時間がある整形は、やはり患者さんが多い。

診察室の並びにある「補装具室」を尋ね、なじみの義肢装具士さんに近況報告をするのが恒例です。

整形外科の主治医は、なんでもズバズバ言ってくれるので、どの科よりもストレートな会話が繰り広げられます。

オブラートに包むなんてことはなく、そんなこと言っちゃうの!? とツッコミどころ満載。

でも、私は事実をバシッと言ってくれるところが好きです。

(6)  小児科の診察

最後は、ここ。小児科にはじまり、小児科でおわります。

採血のとき、挨拶のみで別れた“小児がん仲間”も他科の診察を終えた模様、ここで再会です。

外来で会えるということは、生きている証とも言えます。

「具合は悪いみたいだけど、会えてよかった。」

発病後10年経った今では、その色も薄れてきたけれど、暗に生存確認の側面もありました。

各科の主治医とは、いろいろなことを話します。

身体のことはもちろんですが、学校や仕事のこと、家庭でのこと、恋愛から世間話まで、幅広く。

どの科の先生とも、発病当時から11年の付き合いです。

中学生だった私も、社会人になりました。

先生と私、それぞれの置かれている状況は刻々と変わっていくけれど、“診察”という場でつながっている——。なんとも不思議な感覚です。

信頼のおける医師がいるって、幸せなことだなぁと思います。

「今年もお世話になりました。良いお年をお迎えください。」

ちょっと早いけど、今年も“外来納め”ができました。

イラスト:ふくいのりこ 

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