《88》 婦人科受診で医師と私を仕切る“カーテン”
- 樋口彩夏
- 2015年2月13日
- 読了時間: 3分
婦人科の診察で避けて通ることのできない「内診」。
医療行為とはいえ、抵抗を覚える女性も多いのではないでしょうか。
内診台に横たわると身体を仕切るように、医師と患者の間に“カーテン”を引かれることがあります。
おそらく、開放的な姿勢で医師と向かい合うことによる羞恥心に配慮しているのでしょう。
私は、どうも、あの“カーテン”を受け入れることができません。
視界を断たれ、何をされているのか分からない状況が不安をあおるような気がします。
私の婦人科受診歴は浅く、先日の診察は実に7年振り、2度目のことでした。
主治医のいない婦人科に多少の不安を抱きながらの診察でしたが、信頼できる先生だったので一安心です。
問診につづいて行なわれた内診では、やはり例の“カーテン”がありました。
前回、まだ10代だった私は、「カーテン開けていいですか?」と、迷うことなく無邪気に尋ねていました。
20代半ばになった今回は、一瞬、躊躇います。
医療従事者が快適であれば、よい医療として患者自身に返ってくることを経験から学びました。
「開けてほしいけれど、カーテンを閉めていた方が、先生はやりやすいのかもしれない」。
でも私にとって、“自身に起きていることを把握したい”という点は、発病当初から譲れない部分でもあります。
ここは患者本位でいようと、前回同様、先生に尋ねてみました。
「カーテン、開けてもいいですか?」
予想外の申し出にも、先生は笑って応じてくれました。
「僕は開けてもいいけど、珍しいですね?。
欧米にいた頃は多かったけれど、日本じゃ、あまり言われたことないですよ」。
問診の際も、私の“知りたい”気持ちを汲んでくれた先生は、内診でも丁寧に説明をしてくれます。
「クスコ(鳥のくちばしみたいな開閉動作をする器具)を使って、膣壁や子宮頸部などの異常を目視で観察していきます。これによって、◯◯や××が分かるんです。それから、この棒で・・・・・・(以下、省略)。」
といった具合に、器具やモニターを見せながら、実況解説、質疑応答つきの内診が行なわれたのでした。
終わるころには、「こうやって診察したほうが説明しやすくて、いいですね!」と、妙な体勢など気にも留めず普通に会話をしていたくらいです。
理解も深まったので、我慢せずに言ってみるものだなぁと思いました。
大半の女性にとって、婦人科を受診するのは、勇気のいることです。
しかし、「内診」がそんなに特別なものなのかは、疑問に思います。
そもそも“カーテン”が恥ずかしさや特別感を助長しているのではないでしょうか。
胃カメラやエコーなどでは、検査をしながらモニターを見て、医師の説明を受けるのが一般的です。
それと同じような感覚で経膣エコーなどを受けられれば、もっと自然な気持ちでいられるような気がします。
婦人科を受診することへの抵抗がなくなることで、不調の解決や病気の早期発見にもつながるはずです。
“カーテン”に救われている人もいるだろうし、私のように羞恥心より“知りたい”が勝る人もいるでしょう。
けれども、自分の身体のことなのだから、モニターを先生と一緒に見て説明を請うくらい、どっしりと検査に望んでもいいのではないかと思った婦人科受診でした。

イラスト:ふくいのりこ
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