《46》 求めているのは正しい情報
- 樋口彩夏
- 2014年1月15日
- 読了時間: 4分
身体に障害のある人も使いやすいホテルが増えるためには、どうしたらよいのでしょうか?
《44》:車いす利用可のホテル探しの現状
《45》:設備と価格のバランスがとれている好事例
を踏まえて、私の考える課題と提案です。
まず、課題です。おおきく分けて2つの課題を挙げてみます。
・情報がない
・部屋数が少ない
まずは、情報について。
《44》に、私の宿探し行程を再現したとおり、車いすユーザーがひとりで泊まれるホテルを探すのは、大変な作業です。
それは、“正確な情報”がないから、にほかなりません。
私たち利用者は、ホテルのありのままの情報を必要としています。
ホテル側の見栄や謙遜、保身に影響されることのない“事実”でなければなりません。
しかし、次のような現状があります。
“「ない」のに「ある」”
入口を車いすで通ることができないのに「車いす可」と記載されている場合が、それに当てはまるでしょう。
“「ある」のに「ない」”
立派なユニバーサルルームがあるにも関わらず、ホームページに記載がないこともあります。
なぜ、このような状況が生まれるのでしょうか。
想像するに、端的に言うならば、ホテルのリスク管理です。
その背景には、事業として利益をあげる必要があることと、私たち障害者の言動があるように思います。
たとえば、「バリアフリー・ユニバーサルルーム」のような表記を信頼して宿泊をした障害者がいました。
そこが、その人にとって満足のゆくバリアフリーでなかったとき。
「○○ホテルは、ちっともバリアフリーじゃなかった。」
なんてことを、普段の会話や個人のブログ・SNSなどで、言ったとしたら・・・。
本人は深く考えずにした発言で、悪意がなかったとしても、身近な人のクチコミは説得力をもっています。
それで利益をこうむる人もいるかもしれないけれど、何気ない言動からホテルの客足が遠のいていくことは、十分に想像できることです。
そうなれば、死活問題。
ホテルとて経営がかかっている以上、無用のリスクは負いたくないと考えるのは当然のことでしょう。
半端な設備ではバリアフリーを謳えない、という思考が働きます。
すると、バリアフリーやユニバーサルデザイン(UD)客室のハードルが高くなってしまうのです。
そもそも、いろいろな障害をもった人が利用する中で、「完璧」なんてあり得ません。
利用する側の要望が高いこと。
“UDルームとは、こうあるべきだ”という、双方の画一的な考え方。
情報の開示を妨げる要因は、ホテル側・利用する側の双方にあるのではないでしょうか。
また、「UDルーム」と冠することで“身障者専用”と受け取られてしまうことも、ホテルにとってはマイナスかもしれません。
全体として高い利用率を維持するには、UDルームも常に動かしていたいところでしょう。
しかし、そこを必要とする身障者の利用頻度が低いことは否めません。
高級ホテルにおいては、ブランドイメージを守りステータスを示すのも大切なことです。
そこに福祉の色はそぐわないと、「UDルーム」の記載を控える気持ちも分からなくはありません。
でも、本来あるべき姿は、きっと、そうじゃないはずです。
いいモノがあっても、それを必要としている人に届かなければ、意味がない。
必要としている人に使われてこそ、価値があるのです。
そのためには、正確な情報を公開することが不可欠です。
それも、分かりやすいカタチで。
バリアフリーやユニバーサルデザインという概念がそれを邪魔するのなら、無視したって構わないと思います。
だって、そこに完璧は存在しないから。
私が泊まるところを探すときにほしい情報は、「バリアフリー対応」や「車いす可」という文言ではありません。
客室の写真やドアの間口の寸法、段差があるなら何センチメートルなのか、などなど。
バリアなところも、バリアフリーなところも、ありのままの事実をそのままに示してほしい。
そこがバリアフリーかどうかは、利用する人がそれぞれの視点で判断すればいいのです。
ホテルは、その判断材料を提供するだけにすぎません。
そうすれば、利用者がバリアフリーじゃない、なんて不満を言う余地もなくなります。
こう考えたら、情報開示もむずかしく考える必要はなく、簡単なことではないでしょうか?
近年、たくさんのホテルや旅館が、障害者・高齢者を想った工夫をしている傾向があります。
私は利用する側として、その情報を得られないことが、もどかしくも悲しく思います。
でも、それ以上に、宿泊施設の方の想いや工夫が、利用者に届かないことで無下になる、と思うと切なくなります。
私たち障害者にも人並みに宿の選択肢をあたえてほしいと思うと同時に、ホテル・旅館の方の努力も実ってほしいと願って止みません。

イラスト:ふくいのりこ
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