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《69》 目指せ 車いすアクセス・マニア

  • 樋口彩夏
  • 2014年7月29日
  • 読了時間: 5分

海の日だった3連休に、京都と大阪へ行ってきました。

目的の一つは「全国車いすアクセス・マニア集会」へ参加することでした。

車いすユーザーが自身の経験から培ってきた、公共交通機関を利用するためのノウハウを発表し合い、共有する場です。

電車やバスなど、車いすでも利用できる公共交通機関は、年々、増えてきました。

しかし、気の向くまま制約なく利用できるかと言えば、現状は厳しいものがあります。

駅にエレベーターがないためルートを変更せざるを得ない、なんてことは日常茶飯事です。

電動車いすに至っては、新幹線や飛行機に乗せられないケースがあるなど、理解しがたい搭乗拒否が起きているのも事実です。

「誰もが利用できる交通機関」を理想にすると、まだまだ日本は発展途上と言えるでしょう。

今よりも厳しい状況の中、ときにはトラブルや批判に見舞われながらも、ひたすら公共交通機関の利用に挑戦し続けた車いすユーザー達がいます。

幾多の困難を電車やバスに乗ることのできる喜びや、旅行の楽しみに繋げることで、道を切り拓いてきた人達を「車いすアクセス・マニア」と呼ぶそうです。

そんな愛すべきマニア達の恩恵を受けている私は、その知識と知恵を学びたい!と意気込み参加しました。

参加してみると、驚きと学びの連続でした。

まず驚いたのは参加者の顔ぶれ、電動車いすユーザーの多さです。

会の名称どおり、相当マニアックなテーマであることから、車いすに乗っている人が多いのだろうと予想をしていました。

でも、どうやら私の中には"車いすユーザー=手動車いす"という、安易な思い込みがあったようです。

会場のある階でエレベーターを降りると、すでに数人の電動車いすユーザーの姿がありました。

それを見たとき、車いすと一口に言っても、手動・電動・ストレッチャー仕様と実にさまざまな種類があることを思い出したのです。

参加者20人強のうち、手動車いすに乗っていたのは、私を入れて3人だけ。

あとの人は、全員、電動車いすに乗っていました。

電動を見る機会の少ない私は、そのメカメカしさに興味津々!

うつ伏せや仰向けで寝たままジョイスティック(進路操作をする棒)を動かす仕様や、起立姿勢で乗るもの、どっしりと大きな造りであったり、小型モーター付きの簡易電動だったり、ハンドル型や座位でのリクライニングなどなど、多様な形態がありました。

それに加えて、それぞれが自分仕様に工夫を凝らしています。

腕時計をアームレストに付けたり、ドリンクホルダーや小物入れを設置したりする工夫は当たり前。

さらには「転落防止のホーム柵、求む!」といった主張が書かれた立て看板を車いすに設置して広告的用途を兼ねるなど、個性豊かな電動車いすばかりです。

アットホームな集まりではありましたが、電動車いすという機械が密集している点だけを見ると、一風変わった集団だったことでしょう。

二つ目に驚いたのは、会場設営です。

よくあるのは、プロジェクターなどの投影設備を正面に、参加者席として机と椅子を並べる形だと思います。

しかし、会場はがらんとしていました。

部屋の隅に机と椅子を寄せて作られた中央の広い空間に、参加者は点在しています。

たしかに今回の参加者層を考えると、みんな“マイ椅子”を持っているので、会場に椅子を準備する必要はありません。

机も、画一的に使える状況ではないため、なくてもよいのでしょう。

大きさも形態もさまざまな車いすユーザーが集まっていることから、むしろフリースペースのほうが使い勝手がよいのかもしれません。

ちょっと考えれば分かることだけれど、広々とした会場を見てはじめて、私はそのことに気が付きました。

最後の驚きは、なんと言っても、車いすアクセス・マニアの方々の知識と経験の豊富さ!

一人ひとりに専門分野のようなものがあるようです。

鉄道オタクに乗り鉄・撮り鉄などの分野があるように、車いすアクセス・マニアにも、バス事情に詳しい人もいれば、電車に精通している人もいて、それぞれが興味のある分野を突き詰めているようでした。

車いすユーザーが旅行へ行きたいと思ったとき、各種交通機関を使う中で、あらゆる困難が予想できます。

それだけでも心が折れそうになるのに、そんな不安を跳ね返して、前へ進もうとする気概に圧倒されました。

経験を積むにつれて身についた"交渉力"と"乗る力"は、目を見張るものがありました。

この会に参加するまでは、私も車いすアクセス・マニアを名乗れそう♪ と思っていましたが、彼らの足元にも及びません。

日本は、建物のバリアフリーが進んでいく一方で、交通インフラや心のバリアフリーはいまいち進展が見られないように思います。

障害者を街で見かける機会が少ないことから、本質的なバリアフリーの必要性が社会に伝わっていないような気がしてなりません。

私たちが人生を楽しみ、積極的に外へ出ていくことが、誰もが暮らしやすい社会への一助になると、私は思います。

目指せ、車いすアクセス・マニア。

これからも、いろいろな乗り物に乗って、外へ出かけたいです♪

イラスト:ふくいのりこ 

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