《98》 健診結果はD、でも私には……
- 樋口彩夏
- 2015年9月22日
- 読了時間: 3分
職場で実施されている、年に1度の定期健康診断。
労働安全衛生法等により義務づけられていることから、会社に勤めている人の定例行事です。
私の勤め先でも、その時期がやってきました。
実施形態は、だいたい下記の2パターンに分けられると思いますが、私の勤務先は例年後者です。
・会社が指定した病院へ社員が赴く場合
・検診車が来て社内に特設診療ブースを設ける場合
その日、会社の大会議室は、各検査ブースが並ぶ診療所へ様変わりします。
今回、私の受けるべき検査は、次の項目でした。
検尿 → 身長 → 体重 → 体脂肪率 → 視力 → 血圧 → 採血 → 問診 → 胸部エックス線
問診票を片手に、各ブースをスタンプラリーのように回っていきます。
車いすの私は立つことができないので、立位での測定(身長・体重・体脂肪率)は免除してもらいました。
視力検査・血圧測定はすんなりと、採血は血管が採りづらくて苦労させてしまったけれど、なんとかクリア。
問診票に、検査項目が書き足されていきます。
面白かったのは、検診車で行われる胸部エックス線検査。
車いすで受けられるのだろうか…? と、半信半疑な私の前に現れたのは、なんと、リフト付きの検診車でした。
数年前に入社した年、検診車自体が初体験だった私は、好奇心に胸が踊り、内心はまるでテーマパークのアトラクションにでも乗るかのような心境でした。
今年はすこし慣れてしまったけれど、非日常感を放つリフト車を前にすると、やっぱりワクワクしてしまいます。
専用の車いすに乗り換え検診車後方のリフトで車内へ入ると、狭い車内をギリギリの間合いで移動し、所定の位置で止まりました。
その停車位置=撮影場所もまた、垂直に上下するリフトになっていたのです。
床が持ち上がり、車いすに乗っている私の目線は、次第に高くなっていきました。
技師さんがちょうど良いところで止めると、そのまま撮影をして、胸写終了。
狭いというイメージが先行し、車いすで検診車は無理だろうと思っていたので、感心した出来事でした。
そして、毎年、ちょっとややこしいのは問診です。
毎回毎回ひっかかる箇所があります。
【既往歴:ユーイング肉腫、輸血歴あり】
これが目に留まったら、医師として触れずにはいられないのでしょう。
私が乗り越えてきた治療の厳しさを察するように先生は言います。
「大変でしたね……」、「頑張りましたね……」。
たいてい、この一言から問診がはじまります。
「そうなんです。頑張りました(苦笑)」と私が応じると、その場に妙な一体感が生まれるから不思議なものです。
また、知的好奇心からか、治療内容や後遺症にまで話がおよぶこともしばしば。
珍しい病気で治療過程もマイナーなことから、図らずも先生の専門性や勉強の度合いが見えてしまいます。
ときには、「どんな病気ですか?」と医師らしからぬ発言におどろいたことも・・・。
何も触れずにスルーする先生もいて、こちらが拍子抜けしたこともありました。
既往歴に大病がある際、どんな対応が正解なのかは分からないけれど、ある意味では神経を消耗する問診でもあります。
1カ月後、健康診断の結果は予想通りのものでした。
「D:要検診」
厳しい治療を経て、さまざまな後遺症が残る身体です。
一般的な基準に当てはめれば「異常値」でも、私にとっては「正常値」ということも十分にあり得ます。
それを加味して今回の結果を分析すると、「A:正常」と読み替えて差し支えないでしょう。
今年の健康診断も無事に終えることができました。

イラスト:ふくいのりこ
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